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「旧姓?私は結婚などしてませんけど…」
「そうですか、では三浦という名に聞き覚えはありませんか?」
「ありません」
「嘘をついたらだめだよ」
嘘じゃない、嘘じゃない。
私は冬村なんだ。
「調べさせていただきました」
「…何を」
「あなたの旧姓が三浦である事、実の両親がある組織に関与していた事、冬村家は実の父の弟家族で叔父にあたる事」
「…どうして?調べて何になるんですか」
「言ったではありませんか。情報が欲しいと」
情報欲しさに人の個人情報を調べるんだ。
やり方が汚いんじゃないの。
「私は何も知りません」
「Aお姉さん!」
「本当に知らないの!…知らないの……」
戦うだけが人を守る事じゃない。
言わない選択だって立派な守りだ。
「ボク達に話してよ。…何を抱えているの?」
「やだ…」
「力になりたいんだ」
「やだ…っ…もう誰も…殺したくない」
余計な好奇心は身を滅ぼす。
そして大切な何かを失う。
私の場合は両親だった。
何故か分からないが元々二人が研究所で働いてるとは知っていた。
だから興味が湧いてしまった。
何の研究をしてるのか。
それがいけなかったんだ。
情報が漏れたと思った組織は私を殺そうとした。
ここで不幸だったのが、奴らは私の顔を知らなかった事。
だから代わりに両親が命を落とした。
馬鹿な娘を庇って。
私を殺すよう命令されたのに…逃がしたのだ。
『始末したと上に言うから、逃げなさい。そして三浦の名前と記憶を消しなさい』
それが最後に聞いた言葉だった。
だから私は冬村Aとして平々凡々な毎日を送っていたのだ。
確かに私は死んだ事になってる。
しかし組織は信じてはいなかったようだ。
「君と君の家族をこちらで保護させてもらいたい」
「無理です」
「どうして!?」
「どうしても何も…もう居ませんから」
「え…まさか」
「殺されました。私を引き取ったばっかりに」
みんなみんな、私が殺したようなものだ。
冷静になって考えてもみろ。
何故ばらばらで暮らさなきゃいけなかったのか。私達だけが引っ越したのか。
全員で引っ越せば奴らも追ってくるだろう。
逃げたところで無駄だったのだ。
だから半分が残った。お父さんとお兄ちゃんが。
厄介事に巻き込まれて尚私を売らなかった。
馬鹿だよ、本当に馬鹿。
さっさと私を引き渡せば殺されなかったのに。
どうしてこんな奴を庇ったりなんかしたの。
守ったりなんかしたの。
失うくらいなら、始めから誰の側にも居たくないよ。
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作者名:りん | 作成日時:2018年3月22日 22時