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5月末。屋上。
『あれ?本読んでるの?』
「うん。この作家さん面白くて」
『推理小説か〜。私にはちょっと難しいかも笑』
そういえば、読書が好きって言ってたな…。
夢中で本を読んでいる横顔が綺麗で、ジッと見てしまう。やっぱ好きだな〜って。
「…ん?どうしたの?」
『なんでもない』
「なになに!気になるんだけど。なんか付いてる?」
『付いてないよ笑』
よかった、って北斗。私はよくない。「なんか付いてる?」で顔ぐーっと近づけてきたんだから。心臓にわるい…。
顔が赤くなってないか不安で、目線を上にあげる。
雲ひとつない青空。ここからみる景色はいつも綺麗だった。
「そういえば、ここ誰もいないよね」
『噂だけど、この屋上って告白する時にしか使われないみたいなの聞いたことあるよ』
「え、なにそれ。初めて聞いた」
『噂だよ?だとしたら、私たち毎日告白しあってるようなもんじゃん』
「たしかに笑」
そうなれたら良いんだけどな、って願望も混ぜつつ発言。たしかに、って帰ってきたから、ちょっと嬉しい。ちょっとっていうか…かなり?
「…やば、チャイムなっちゃう。」
昼休みの中盤に屋上に来たからか、すぐにバイバイすることになってしまう。その分内容(言動)は濃いものだったけど
立ち上がって、屋上のドアを開ける。お互いのクラスまで一緒に行く。そこまでは毎回一緒だったが、急にA組前で止まって、こちらを振り返る。
「これあげる。」
手紙。便箋に包まれていて、紙一枚なのになにかを期待させるようなずっしりとした重さ。
「まだ読まないでね。今だ、って時に読むんだよ?」
『あ、うん。分かった。ありがとう』
今だ、って時?
「またね」
消えちゃいそうな表情で、いつもと違う台詞で北斗がそう言った。思わず、「なにその別れ方笑」って笑う。
この言葉の意味は、後々わかることになった。
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作者名:Y | 作成日時:2022年12月5日 17時