Curtain call. 〈Hokuto.M〉 (ページ27)

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北斗side

今俺の左腕にくっついているこいつは、赤崎百合花。同じ薬剤師の仕事をしていて、仕事の腕は上の人も認めるほど。もちろん俺だって、百合花の実力はすごいと思ってる。でも…

いつからか、俺にべったりくっついてくるようになった。1ヶ月くらい前とか、そんくらい。理由も分からないけど、多分…いや、絶対、俺のことが好きだ。そろそろうざったいし、離れて欲しい。そう言っても向こうは諦めようの“あ”の字もない。

今だって、Aになにか言ってる。

言い終わったあと、俺に視線を向けてきたA。助けて、みたいな目だった。

『…Aっ、』

助けたい。今すぐこんなやつと関わるのはやめて。俺の好きなAを、これ以上百合花のことで苦しませたくない。

そんな思いは心の中にたくさんあったはず。なのに、足が動かない。百合花に「やめろ」って、言えない。なんでだよ、動けよ、俺。Aを助けたいんだろ。

Aも耐えられなくなったのか、なにか呟いたあとその場を離れて、小走りで家に帰ってしまった。結局何も言えないままだった。

『…百合花』
百「？」
『どういうつもりだよ。』
百「なにが？北斗と私が結ばれるならいいじゃん」
『俺はそんなこと望んでない！』
百「なんで？」

Aが行ってしまってから動く足と口。

なんで、とか。どうして、とか。百合花はそんなことばっかり。こっちが言いたい。

『俺は、Aのことが好きなんだよ。』
百「…は？」

あんなやつのどこがいいの、って言われた。
…あんなやつ？Aは俺にとって、大切でずっと幸せでいてほしいと思ってる存在なのに。

そんな百合花が許せなくて、一発叩いてやろうかと思った。でもそんな右手は出すこともできなくて。

俺こんな弱いやつだったっけ。ごめん、A。