Curtain call. 〈Hokuto.M〉 (ページ37)

今日:34 hit、昨日:17 hit、合計:86,536 hit

. ページ37

.

そこには、「松村北斗」の字。ちょっと信じられなくて、震えていた手が一気に固まる。さっきとは違う意味で手が動かない。

何振動か続いた後、心臓が飛び出そうなくらいに緊張している胸を押さえながら応答マークを押す。

『…もしもし？』
「A！」

久しぶりに聞いた、私の名前を呼ぶ声。もうないと思ってた、涙が溢れ出てしまいそう。

スマホを持つ手に力が入って、耳の方に集中してみると、北斗の荒い息遣い。…走ってる？

「…いまから、会おう」
『…！うん！』

驚くよりも先に、足が動く。まるでこうなることが分かっていたかのように動く足は不思議だった。今から行く先も、何も知らされてないのに分かった。
部屋着のパーカーのまま家を飛び出して、目的地へ向かう。なんでだろう、怖くない。今の私なら絶対に大丈夫だ。

時刻は16:30。夕日がいい感じに照らされていて、走っている地面はオレンジ色に近かった。

最近運動してなかったからか、足が筋肉痛になりそうなほどパンパンになった。目的地の入り口まで着いて、手を膝に置く。息を整えながら誰もいないそこを見渡すと、北斗と思われる姿があった。

『…北斗！』

会えてなかった2週間は自分が思っているよりもずっと長かった。好きだったんだから余計に。

それを乗り越えて、今は出来る限りの大きな声で彼の名前を呼んだ。パッと振り返る姿を見て、安心と何かが這い上がってくる。

.