雄英高校の鎖切くん。 (ページ2)

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2.悪魔の記憶ページ2

『う"っ……あ"ぁ…っ…』

　引き裂くような痛みが四肢と顔面に走る。

『まただ……なんなんだろうこの痛み……お医者さんも分からないって、ぼく、死んじゃうのかな……？』

　生まれてより、現在6年と10ヶ月。
　悪魔の子は輪廻の際暴れたが故に、記憶を失っていた。

母「Aー？宿題終わったらリビングにおいで。お菓子食べよう」

　悪魔の子の母、と言っても母は悪魔ではない。ごく普通の人間である。
　この世界では常識の、ある一点を除けば。

『やったぁ！ねぇお母さん、僕この問題がわからないんだけれど……』

　悪魔の子は一抹の不安をかき消し、喜びを表す。

母「あら、分かったわ。お母さんの向きを変えて見せて？」

『うん！』

　悪魔の子は、机上に置いてある愛らしいクマのぬいぐるみを、宿題が目に映るように動かした。

母「そうね、ここは足し算ではなくて、引き算ではないかしら」

　記述は母であるが、発声したのはぬいぐるみである。これが普通でないある一点、【個性】だ。

『そっか！ ……お母さんの【パペットマスター】、便利だねぇ。僕も欲しいなぁ、早く出ないかなぁ！』

母「…………そうね、きっと良い個性が現れるわ。楽しみね」

　悪魔の子は人間ではない。故に人間の進化の賜物である【個性】が発現するはずも無いのだが、母はそれを伝えることをしない。
　彼女なりの"伝えるタイミング"とやらがあるのか、まだ我が子の可能性を信じているのか。

　彼が悪魔の子であると、まだ誰も知らない。