. ページ21
＋＋
＋＋＋
ガツンと、殴られたような衝撃だった。
先程物を投げられたときよりも、ずっと大きな。
穢らわしそうに憎々しく口を開いた母親が、まるで悪魔や魔女のような、恐ろしい存在に思えた。
腹が立って、情けなくて、悔しくて、怖くて、震える手を握りしめて玄関へと走る。血が滲んでるとか、もう辺りは真っ暗だとか、何も考える余裕はなかった。ただひたすら家から逃げ出したくて走って、たどり着いたのは、小さい頃からずっと遊んでいた公園だった。何かあるとすぐここへ来てしまう、あの頃とはまた違った雰囲気の、暗い暗い公園だった。
ベンチに座って、足元を見る。もうどうしても溢れてしまう涙を止める術を知らなくて。ポツポツと落ちるそれが服を濡らし模様を作る。惨めだった。
どうして。
苦しいのは、お父さんのせいじゃなかったの。
あの人はいなくなったのに、どうして。
どうして、幸せになれないの。
後日、母から放たれた言葉が頭を離れなくて部員の皆の顔を見れなくなった。それから少しして私は、サッカー部を退部したのだ。
＋＋
＋＋＋
｢マネージャー｣
一言だけ言い放たれたその言葉に、意識が引き戻される。顔をあげれば明智がこちらを見ていた。
｢な？｣
｢っ……｣
覗き込むようにして同意を求められ、頷く。
どうやらさっきの一言は明智が放ったらしい。
そっちかー！と、きっと選手だと思っていたのだろう駒井が大げさに反応して皆が笑う。
嫌なことを、思い出してしまった。
気分が悪くて机に伏せる。
せっかくちゃんと来たのに寝るのかよ！という東条の声が聞こえたけど、返事をする気力もおきず寝た振りをして。
先程、な？と言った彼にほんの少しの憂慮が見えた気がした。
その表情が焼き付いて離れなくて、全て忘れてしまいたいと眠くもない瞼をぎゅっと瞑ってみる。
やっぱり早起きなんて、するもんじゃない。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 1096人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「オリジナル」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ハル - すごく大好きです！更新も無理せずにゆっくりでいいので、楽しみにしてます！ (2019年6月16日 0時) (
レス) id: aceffff8a7 (このIDを非表示/違反報告)
なー(プロフ) - 鶴さん» ありがとうございます!更新は遅いですけど読んでいただけると嬉しいです(^o^) (2019年6月12日 13時) (レス) id: 3cdd23f11d (このIDを非表示/違反報告)
鶴 - すごくはまってしまいました！ 続きも楽しみにしています！ (2019年6月4日 22時) (レス) id: c081e3d2cd (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：なー | 作成日時：2019年6月2日 21時
