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漸く引いてきた腫れにまあこのくらいならと思い洗濯機に入っている制服を取り出す。
水気を絞って袋に入れて、財布と鍵を持って外へ出る。
クリーニングを頼んでから、ご飯の材料を買おうとスーパーへも寄ってみた。
「カレーでいっか」
玉ねぎと人参と、適当に材料を手に取ってカゴへ入れる。
あまりお腹も減ってないから夜に少しだけつまんで、残ったら冷凍して…なんて考えながら買い物をする。
レジを終えて、「ありがとうございましたー」という気だるげな男性店員さんの声が遠くで聞こえた。
見慣れた道、見慣れた景色。なのに。
何だか急に男の人の顔を見るのが怖くなって、俯きながら帰った。
ぐつぐつと煮込まれるカレーをぼーっと眺めながら、そろそろいいかなと火を止める。
まだ夕方だから食べるのには早いし…と思いながら何をしようと考えていると、昨日部活のジャージを部屋に置きっぱなしにしていたのを思い出した。
今夜は雨らしいから、明日洗おうと思いつつ、忘れそうだから洗濯カゴには入れておこうと、部屋へジャージを取りに行く。
キッチンは窓があるから少し明るかったけれど、窓のない廊下は薄暗かった。
鞄からジャージを出して、1階へ向かう。
脱衣所に置いてある洗濯カゴへ投げ入れて戻ろうとすれば、洗面台の鏡に映る自分と目があった。
電気もつけず薄暗い部屋だけど、頬の赤みと、洗いすぎて赤くなった肌が胸元から見えているのが分かった。
見えている肌をなぞり暫くぼーっとしていると、ガチャリと玄関の開く音が聞こえた。
私を呼ぶ声が聞こえて、一瞬で体が強張る。
「いるのかー？」
探している。私を。
また、虐げられるのだろうか。
あの荒い息遣いが耳に聞こえた気がして眩暈がした。
音を立てないように震える手を必死で押さえて、私の名前を呼んでいる父が階段を上っていくのを確認する。
2階の部屋の扉を開いた音を聞いてから、今だ！と縺れる足で玄関まで走って、靴を履いて飛び出した。
夕焼けの空はまだ少し明るくて、眩しかった。
隠れるようにフードを被って、押さえながら走った。
誰にも見られたくない。誰も見ないでほしい。
汚い私なんて、醜い私なんて。
辿り着いたいつもの公園。
上がった息を落ち着かせるために膝に手をつく。
暑くて捲った袖からは握りしめられてできた痣で青くなっている腕があって、その後ろの地面は、散って踏みつけられた桜で汚れていた。
初めてみる、汚い汚い春の景色だった。
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ハル - すごく大好きです！更新も無理せずにゆっくりでいいので、楽しみにしてます！ (2019年6月16日 0時) (
レス) id: aceffff8a7 (このIDを非表示/違反報告)
なー(プロフ) - 鶴さん» ありがとうございます!更新は遅いですけど読んでいただけると嬉しいです(^o^) (2019年6月12日 13時) (レス) id: 3cdd23f11d (このIDを非表示/違反報告)
鶴 - すごくはまってしまいました！ 続きも楽しみにしています！ (2019年6月4日 22時) (レス) id: c081e3d2cd (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：なー | 作成日時：2019年6月2日 21時
