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｢借りてきたよ｣
｢えっ、ホラーじゃん！｣
｢面白いかなって｣
｢私の反応がでしょ！｣
ふっと鼻で笑った秀一を盾にするように少し後ろに座って、借りてきたというホラー映画を、彼の肩越しからそっと見る。
恋愛モノがむず痒くて一番苦手だけど、ホラーも人並みに苦手だ。
映像に垣間見える白い顔を直視できなくて秀一の背中に頭をくっつけへばりついていれば、
｢ちゃんと見ろよ｣
とベリッと剥がされ隣に移動させられた。
遮るものが何も無くなってしまったのであんまり意味は無いけど、さっき貸してくれたパーカーのフードを引っ張ってできるだけ深く被る。
そうして少し暗くなった視界でできるだけ見える範囲を狭めるように俯いて上目遣いでテレビを見ていれば隣からふっと笑う声が聞こえた。
｢相変わらずビビりだね｣
｢うるさいよ｣
｢強がんなって｣
余裕そうに横目でこちらを見ているのがむかつく。小さい頃は、涙目で私の後ろを着いて回ってきていたくせに生意気だ。
…なんて、仕返しが怖いから本人には絶対に言えないけど。
終盤に差し掛かかりクライマックスを終えた映画は、何となく平和な映像が流れ出す。
構えていた体勢を解いてフゥと息を吐けば｢おつかれ｣と背中を叩かれた。
緊張が解けたせいか急に瞼が重い。秀一も何度か欠伸を漏らしていた。
気付けば時間は23時を回ろうとしていた。
エンドロールを最後まで観てそろそろ帰らなきゃなと腰をあげる。
「パーカー、明日返すね」
「ん」
「…明日も、きていい？｣
「いーよ｣
明日は、ゲームかな、なんて考えながら「お邪魔しました」と告げて秀一の家を出る。
自宅の扉を開ければ、もう寝ていると思っていた父が、リビングでお酒を飲んでいるのが見えた。
「…Aか？」
「うん。…飲みすぎじゃない？」
「母さんがいないときくらい、いいだろ」
疲弊した顔で溜息を吐いて言葉を放つ父の周りにはいくつかの缶ビールが転がっている。
それっきり何も話さなくなった父に思わず溜息が漏れる。
きっと置きっぱなしになるだろう空き缶は、明日の朝片づけよう。
「…秀一の服、洗おう」
俯いた先に着ているパーカーが目に入って呟いた。
ゴンッと缶を置く音がして目を向ければ、荒々しく置いたせいかビールが零れているテーブルと、テレビを付けだした父。
何だろうと思ったけれど、テレビに向かったその顔は、一度だってこちらを向くことはなかった。
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ハル - すごく大好きです！更新も無理せずにゆっくりでいいので、楽しみにしてます！ (2019年6月16日 0時) (
レス) id: aceffff8a7 (このIDを非表示/違反報告)
なー(プロフ) - 鶴さん» ありがとうございます!更新は遅いですけど読んでいただけると嬉しいです(^o^) (2019年6月12日 13時) (レス) id: 3cdd23f11d (このIDを非表示/違反報告)
鶴 - すごくはまってしまいました！ 続きも楽しみにしています！ (2019年6月4日 22時) (レス) id: c081e3d2cd (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：なー | 作成日時：2019年6月2日 21時
