公安警察、辞めさせて下さい【安室透/降谷零】

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「行ってきまーす！...って」


そうだ
誰もいないんだった...

新品のようなスーツを包むのは春の暖かな空気
足元は靴擦れが怖くて3月の間に何度も履いたパンプス

昨日夜遅くから始まった初めての一人暮らし
警察学校は寮だったし、卒業後も九州の田舎に戻っていた
おじいちゃんおばあちゃんにも壮大に見送られて戻って来た東京は、私の夢が詰まってるはず

忘れずに鍵をかけて、階段を駆け降りる後ろで揺れるのはハーフアップにした髪
黒い手提げのバッグに入っているのはお弁当や水筒、研修の資料や筆記用具

私はAA
歳は22、今年で23になる
つい最近警視庁警察学校を首席で卒業して、総代も務めて卒業生代表で答辞もして
実は少し前の在学中に公安部にスカウトされた

お陰で卒業式の後

友『え！？A警察辞めるの！？』

友『なんで！？主席なのに辞めるとか聞いた事無いよ！』

『や、やっぱり普通のOLになってみたくてさ...』

嘘をつく羽目にもなった
皆はそれぞれ交番にまずは配属になったらしいけど
このまま疎遠になっていくんだろうな...
家族にも東京で銀行員になったと伝えてある
それはそれで喜んでくれたし、警察学校が無駄だったとかは一切言われなかった


電車に飛び乗って目指すは桜田門
眠そうなスーツの人ばかりの中、今日の予定をきっちり確認しながら考えるのは
退勤したら菓子の詰め合わせか何かを買いに行かなきゃいけないという事
まだ近隣の住民に挨拶も行ってないし、大量の段ボールもまだ半分も開けてない

『桜田門、桜田門、お出口は右側です』

今日から私も警察官
ずっと夢見た警察官
きっかけは迷子になった時に助けてくれたお巡りさんがカッコ良かったから、という甘ったれた理由だけど
それでも私は今胸に警察手帳を持ててる事を誇りに思う

思い描いていた職務とは違うけどこれから公安警察の一員として、私はこの国を守っていくんだ
精一杯頑張ろう
働き倒そう
...と思っていたら


「あの、今日こそ辞表を

「ダメだ。お前が辞めたらその分の仕事を誰がやるんだ」

「引き継ぎなら当てはあると何度も言って

「それより報告書の再提出の期限は今日だったはずだが」

「そ、それはすぐに...っ、降谷さん！」

「辞表はそこのシュレッダーに入れておけ」

「しゅ、シュレッダー...？」

「わざわざお前の為に私費で買ったんだ、有効に使え」

「なっ...！シュレッダーじゃなくてサインして下さい！降谷さん！」


1年経ったら辞めたくなっていた

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