もうただの一般人なんて言わせない【安室透/降谷零】

９８話 ページ1

「もしもし」




買い物袋を片手にさげ、帰路を歩く。



誰かから電話がかかってきた。



"あぁA、僕だ"




『！？あ、安室さん！！？』






それは突然だった。



何日も連絡１つよこさないで、急に電話なんて。




まぁ安室さんらしいっちゃあらしいけど。





『良かった！心配してたんですよ！』





"あぁ、すまない"





……………………？



なんだか、声が…



安室さんはあからさまに元気がない。




ふと顔をあげると、どんよりと雲が空を覆い雨を降らせそうだった。




まるでそれが、彼の気持ちを表しているようで。




『も、もう帰って来れるんですか？』




再び歩き始めながらスマホ片手に聞くと、電話の向こうから肯定の返事が帰ってきた。




どうしよう。




なんだか様子がおかしい安室さんには申し訳ないけど、すごく嬉しい。




安室さんと久しぶりに会えるってだけで、顔が綻ぶ。




"A、今どこにいる"




『え、今ですか？ええと……スーパーから家に帰る道にいます、今日の晩御飯の材料買ってきてて』




"そうか、今からそっち迎えにいくから……そこで待っててくれ"




『えっ？』





私が聞き返したのもつかの間、通話は一方的にブツリと切られた。




ﾂｰﾂｰと無機質になるスマホに目をやる。




迎えに来てくれるのは、荷物も重いしすごく嬉しいけど。




けど………………




『どうしたんだろ………安室さん』




家を出る前とは様子が全然違った。



やっぱり何か安室さんの身にあったのだろうか。



脳裏に薄く口角をあげるベルモットさんの姿が浮かんで、慌てて首を横に振った。


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