9話 ページ39
Prrr…!
そう小さくAが呟いた次の瞬間、突然の着信音に沈黙していた二人の肩が大きく揺れた。音源を見ると、それはAのスマホからだった。充電器に刺していたから、少し充電が回復した途端電話がかかってきたのだ。
彼女は快斗のほうを一度チラと見て、自分のスマホを手に取った。
『もしもし、』
電話に出ると、しばらく沈黙が続いた。不思議に思いながら画面を見るが、やはりそこには"工藤新一"の文字。もしかすると新一にも何かあって電話の向こうにいるのは彼ではないのかもしれない。Aは懸命に震える声を絞り出した。返答は無い。
『あの、』
"オメー………Aか?"
もう一度声を出すと、それを遮るように男の声が聞こえた。Aは瞬間、目を見開く。そうです、と言いたくても言えなかった。
なぜなら、電話の向こうの新一の声が。
『何その声………ホントに新一…?』
"あぁ……A、良かった…生きてたんだな"
電話の向こうの彼は良かったと安堵するわりには明らかに元気がない。新一もまた、少しではあるが高くなっているAの声に驚いている様子だった。
声がまるで幼稚園の頃の新一そのもので。Aはもう一度自分の小さくなった姿を見る。
『新一、もしかして新一も……?』
"「も」ってことは、オメーもか?"
彼らは小さい頃からずっと一緒にいる。言葉足らずでも十分話は通じ合っていた。お互いの頭の中に、今すぐ会いたいという思いが募っていく。
……なんでもいい、小さくなってたっていい……
新一に、会いたい。
ポロリ、ついにAの大きな瞳から涙が溢れた。
"お前今どこにいる。俺は博士に事情を話して家に帰ってきたとこだけど…"
『……そう…博士には言ったんだね。分かった、すぐそっちいく』
Aは濡れた目を擦って、一旦通話を切った。ふぅと安堵の息をつけば、彼女の横から快斗が声をかける。
「…今の、名探偵だろ」
『うん、新一も生きてた…。私と同じようになってしまったみたいだけど。
私戻るね…。助けてくれてありがとう快斗!』
そう笑顔を向けるAに、快斗は口をつぐんだ。悔しいけど、やはりAには新一が必要だと、それを痛感させられる。
本当は自分と一緒にいればいい、そう言いたいところだが、帰ると言っている彼女を無理に引き留めることはできなかった。
快斗はせめても、とAに工藤邸まで送ると告げ寺井に電話をかけた。
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mリン(プロフ) - 宵夜さん» こんにちは、コメントとご指摘ありがとうございます!修正が上手く行ってなかったようです。教えてくださりありがとうございました。また何かありましたらコメント宜しくお願いいたします! (2022年3月20日 16時) (レス) id: 535fdf8baa (このIDを非表示/違反報告)
宵夜(プロフ) - とても面白くて良かったです!少し質問なんですが、ページ14の『(小さくなったあなたの仮名)』って目次ページで設定したものですか?変換されていないようでしたので一応報告と思い…不快であれば消して頂いても構いません。 (2022年3月11日 0時) (レス) @page14 id: 5d45bacd52 (このIDを非表示/違反報告)
mリン(プロフ) - マナさん» 久しぶりにきたのでご返信が遅くなってしまい申し訳ありません。数年前の私が作成した拙い内容ですがそれでも宜しければどうぞ使ってやってください…!わざわざコメントありがとうございます! (2022年2月20日 14時) (レス) id: 535fdf8baa (このIDを非表示/違反報告)
マナ - 私なりに作品を参考させてもらっていいですか? (2022年1月30日 8時) (レス) @page1 id: 25d45421cb (このIDを非表示/違反報告)
mリン(プロフ) - まゆさん» コメントありがとうございます!映画沿いもありますので是非ご覧ください。 (2019年5月22日 7時) (レス) id: 148773b33b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:mリン | 作成日時:2017年4月21日 21時