37話 ページ38
「___好きなのか?スピリタス」
その質問に、Aはきょとんとして数秒固まった。
まさか呼び止められて、そんなことを聞かれるとは思っていなかったからだ。
あのときわざとスピリタスを頼んで、降谷を混乱させたのは自分のほうだ。
知られてはいけないのに、
暴いてほしい、なんて。
そんな曖昧な感情が、あの一瞬彼女の中を駆け巡った。
それに自分の言動一つ一つで、降谷があれこれ考えているのを見るのは面白い。
やはり彼は、Aが組織の人間ではないかと探りに来ている。
今日、それは確信に変わった。
おそらく警察庁のお偉いさんに目をつけられているという圧倒的危険な状況。
にもかかわらず、何故か彼女の気分は高揚する。
あぁ、もう
楽しくて仕方がない!!
Aはにこりと人好きのする笑顔を浮かべると、ゆっくりと口を開いた。
『あれは、私の誇りですから!』
====
数日後。
Aはあれ以来、降谷と会っていない。
それどころか、最近事件続きで報告書を作成する手が止まらない。
忙しすぎだろ、捜査一課。
『佐藤さぁん、この報告書いつまででしたっけ』
「えーと確か、明後日のはずよ」
『明後日か………終わらしとこ』
そう言ってキーボードを叩いていると、今日も嫌な音が刑事部に鳴り響く。
通報の電話の音だ。
その音を聞くたびに、Aはげっそりと項垂れたくなる。
報告書を書いたと思ったら通報。始末書を書いたと思ったら通報。
全くキリがない。
「高木くん、濱口くん!ちょっといいか!」
Aは自分の名前が呼ばれないことを祈りながら少し身を縮めてパソコンの後ろに隠れたが、そんな小さな抵抗も虚しく、目暮は高木と彼女を呼んだ。
「はい!」
『はぁい……』
目暮のデスクの前まで行くと、彼もさっと立ち上がる。
「どうかされましたか?」
「うむ、今喫茶ポアロから通報があってな……殺人事件のようだ…。すぐに向かうぞ」
「わかりました!」
え?
蘭さんじゃないの?
『ポアロ、ですか…?』
Aはてっきり、またあのクソガキに会うはめになりそうだと思い肩を落としていたのだが、存外そうでもないらしい。確か喫茶ポアロは、毛利探偵事務所の下にある喫茶店だったか…?
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W.m(プロフ) - このお話の虜になってしまいました!是非続きをお願いします! (2022年7月22日 1時) (レス) @page38 id: cc284c2617 (このIDを非表示/違反報告)
あいちゃん(プロフ) - びっくりするくらい面白いし続き気になります!!ぜひ更新して欲しいです!! (2022年5月21日 18時) (レス) id: 4f6136cbf2 (このIDを非表示/違反報告)
紅月 - 初コメ失礼します!とっても面白いです。探り合いの雰囲気とか格好いいですし、降谷さんがバーボン飲んでもらって赤ちゃん化するの笑いましたw可愛い! (2020年7月19日 13時) (レス) id: be796dbe9a (このIDを非表示/違反報告)
mリン(プロフ) - 雅2さん» 大丈夫ですちゃんとわかってますので!笑笑 この後の話に繋げてるのでご心配なさらず…!変なところで終わってしまったからですよねすみません…!コメントありがとうございました!! (2020年6月8日 2時) (レス) id: 8a2861dc31 (このIDを非表示/違反報告)
雅2(プロフ) - スピリタスって度数96の純正アルコールですよね?そのまま飲んだりすると大火傷を主人公が負ってしまうのでちゃんと水か何かで薄めて他のアルコールの果実酒として飲むようにしてくださいね笑 (2020年6月7日 22時) (レス) id: 57165b9e01 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:mリン | 作成日時:2019年6月22日 17時