検索窓
今日:25 hit、昨日:5 hit、合計:100,921 hit

19話 ページ20

降谷は手をあげてAの言葉を制すると、小さくため息をついた。



表情には出していないものの、その心臓は激しく波打っている。



Aのあんな凍てついた表情を彼は初めて見た。



いつもマイペースで、ニコニコと笑顔を振り撒いている彼女からは想像もできないそれ。



一瞬だが、前に見たベルモットの視線と彼女のものが重なって見えた。



くしゃり、降谷は自分の前髪を手でかきあげる。



彼女を見ると、悪い妄想ばかりしてしまう。



メールの件だってそうだ。



思い込みで、どこかAを信じきれていない自分を、彼は確かに理解していた。



何故、彼女のことを考えるとこうも混乱してしまうのか。







『あの、』



耳に届いた透き通った声に、降谷はハッとして顔を上げた。



心配そうな表情を浮かべるAと目が合う。



『すみません……手首、痛いですか?湿布もらってきます?』



どうやら彼女は、降谷が考え事をして動かないのを、手首の捻挫が痛むのだと勘違いしたらしい。



実際、手首なんてもう全然平気なのだが。



「あぁいや、すまない…考え事をしていた。…それより君、何で公安の仮眠室を使ってるんだ?」



刑事部にも仮眠室があるだろう。そう降谷が話題を変え問うと、Aはばつが悪そうに頬をかいた。



経緯を説明すると、納得したのか呆れたのか、降谷は眉を曲げて小さく笑う。



「昨日、徹夜案件でもあったのか?」

『いえ、私個人の用事ですよ……大したことじゃないです』

「そうか……睡眠の邪魔して悪かったな」



降谷は頷くと、Aの使っていたベッドから漸く立ち上がった。



ほどほどになと付け加え、仮眠室をあとにしようとする。



が、次の瞬間__腕を後ろに強く引かれる感覚に襲われた。



驚いて振り向けば、きょとんとした顔のAがしっかりと降谷の手を掴んでいる。



『え、降谷さんも仮眠を取りにいらっしゃったんじゃないんですか?』



その曇り一つない瞳に、降谷は度肝を抜かれた。



正直、正気かこの女?とさえ思ってしまった。



わかるだろう、普通。



僕と君は、腐っても男と女なんだから。



Aの話を聞いた限り、まだ彼女は十分な睡眠時間を取れていないだろう。



つまり、また寝るということだ。

20話→←18話



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.9/10 (186 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
580人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

W.m(プロフ) - このお話の虜になってしまいました!是非続きをお願いします! (2022年7月22日 1時) (レス) @page38 id: cc284c2617 (このIDを非表示/違反報告)
あいちゃん(プロフ) - びっくりするくらい面白いし続き気になります!!ぜひ更新して欲しいです!! (2022年5月21日 18時) (レス) id: 4f6136cbf2 (このIDを非表示/違反報告)
紅月 - 初コメ失礼します!とっても面白いです。探り合いの雰囲気とか格好いいですし、降谷さんがバーボン飲んでもらって赤ちゃん化するの笑いましたw可愛い! (2020年7月19日 13時) (レス) id: be796dbe9a (このIDを非表示/違反報告)
mリン(プロフ) - 雅2さん» 大丈夫ですちゃんとわかってますので!笑笑 この後の話に繋げてるのでご心配なさらず…!変なところで終わってしまったからですよねすみません…!コメントありがとうございました!! (2020年6月8日 2時) (レス) id: 8a2861dc31 (このIDを非表示/違反報告)
雅2(プロフ) - スピリタスって度数96の純正アルコールですよね?そのまま飲んだりすると大火傷を主人公が負ってしまうのでちゃんと水か何かで薄めて他のアルコールの果実酒として飲むようにしてくださいね笑 (2020年6月7日 22時) (レス) id: 57165b9e01 (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:mリン | 作成日時:2019年6月22日 17時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。