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間昼間のシンデレラ【黒尾鉄朗】 ページ25

────ピンポン。どこか遠くでそんな音がした。何の音なのだろう。私のスマホの目覚ましは、もっと忌々しくてけたたましいおと────。

半ば夢の中を泳ぐようにぼんやりと思考を巡らせた私は、少ししてからその音が家のチャイムだと気がついて、跳ねるように起き上がった。突っ立って数秒。

「あっ、え、……あっ」

だんだんと脳が働き出して、なぜベッドに横向きで足を床に投げ出して寝ていたのか、どうしてあちこちに服が散乱しているのか、だんだんと記憶が蘇ってくる。そうだ、今日は鉄朗とデートの約束だった。


ああ、そうだった。昨夜風呂を出るなりヘアオイルをつけて、パックをして、その後髪が少し水分を失うまで脚のマッサージをした。その間に、前に褒めてもらったワンピースとつい先日に買ったスカートで迷ってはメイクを迷って髪型を迷って、……そこからの記憶が無い。得意の寝落ちだ。

「……はぁ」

自分のあまりの情けなさにため息が漏れた。ふと顔を上げると、机の上の時計が目に飛び込んできた。10時13分。約束の時間は11時。たしか、11時に駅前だった。完全に寝坊じゃないか。もう間に合わない。そう思って2度目のため息がこぼれかけた時、階段の下、玄関の方から母親の声がした。


「あっらあら鉄朗くんじゃないの!」
あの子なら部屋にいるからあがって、なんて呑気に母親は言う。

「んじゃ、お言葉に甘えて。お邪魔しまーす」

きっとニコニコと胡散臭い笑みを浮かべているであろう鉄朗の、間延びした声がする。彼が階段を一段一段踏む音が聞こえる。まだ着替えてすらない私には、もう為す術がない。鉄朗が来たら素直に謝り続けよう。

覚悟した時、ゆっくりと扉が開いた。

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(プロフ) - しおさん» わ、しおさん!!ありがとうございます!!!!!!嬉しいです!!!!!! (2020年5月17日 21時) (レス) id: 1c396819ac (このIDを非表示/違反報告)
しお(プロフ) - コメント失礼しますとてもファンです。いつも素敵なお話をありがとうございます。最高です!!!!! (2020年5月17日 20時) (レス) id: 2d9a1a0004 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名: | 作成日時:2020年5月17日 20時

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