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「お前、なんでずっといなかったの」
「もう1人で生きれると思った」
連れてこられた黒尾の部屋でベッドに腰かけた。床にあぐらをかく目の前の彼は私の手を握っている。
「で、どうだったワケ?」
「……無理だった。死にかけたよ」
私がそう言うと彼は小さく吹き出した。
ばかじゃねぇの、と。

顔を上げると私の顔を覗き込んでいる黒尾と目が合う。
いつもは、彼の胸に顔を埋めていて知らない顔。
熱の篭った瞳を揺らす彼と、目が合った。


ぎい、とベットがゆっくりと軋む音がする。
腰を上げた彼の、大きくて骨ばった右手は僅かに私のスカートを踏んでいる。
彼の反対の手が私の髪を梳くように後頭部に添えられた。

「……俺もばかだな」

いっそう強まった雨音の中に彼の声だけが響く。
彼の瞳の中に私の瞳が見えるほど距離が縮まって、なくなった。

触れ合った部分が熱を帯びていく。
妙に色っぽい彼のそこを思わず指でなぞった。手にかかる彼の息が熱い。

雨の音が遠くでこだましている。



「好きだ、A」
吐息混じりに彼がそう言った。
彼の体重が私を倒して、天井をバックに彼を視界に捉える。

好きだと言った彼の言葉はなんの躊躇もなく私の心に入ってきて、初めからそこにあったかのように存在し始めた。私の中のそれとたしかに混ざりあっていく。

「……黒尾、わたしも、好き」

背中の柔らかさが心地いい。
気がつけば、私の顔のすぐ側に彼の逞しい腕が置かれていた。

「……いい?」

彼は欲の浮かぶ目で、私を伺うように見下ろす。


「……いいよ」


その言葉が合図のように、私は彼の胃がもたれるような甘さに溶けてしまった。

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(プロフ) - しおさん» わ、しおさん!!ありがとうございます!!!!!!嬉しいです!!!!!! (2020年5月17日 21時) (レス) id: 1c396819ac (このIDを非表示/違反報告)
しお(プロフ) - コメント失礼しますとてもファンです。いつも素敵なお話をありがとうございます。最高です!!!!! (2020年5月17日 20時) (レス) id: 2d9a1a0004 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名: | 作成日時:2020年5月17日 20時

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