・ ページ22
「お前、なんでずっといなかったの」
「もう1人で生きれると思った」
連れてこられた黒尾の部屋でベッドに腰かけた。床にあぐらをかく目の前の彼は私の手を握っている。
「で、どうだったワケ?」
「……無理だった。死にかけたよ」
私がそう言うと彼は小さく吹き出した。
ばかじゃねぇの、と。
顔を上げると私の顔を覗き込んでいる黒尾と目が合う。
いつもは、彼の胸に顔を埋めていて知らない顔。
熱の篭った瞳を揺らす彼と、目が合った。
ぎい、とベットがゆっくりと軋む音がする。
腰を上げた彼の、大きくて骨ばった右手は僅かに私のスカートを踏んでいる。
彼の反対の手が私の髪を梳くように後頭部に添えられた。
「……俺もばかだな」
いっそう強まった雨音の中に彼の声だけが響く。
彼の瞳の中に私の瞳が見えるほど距離が縮まって、なくなった。
触れ合った部分が熱を帯びていく。
妙に色っぽい彼のそこを思わず指でなぞった。手にかかる彼の息が熱い。
雨の音が遠くでこだましている。
「好きだ、A」
吐息混じりに彼がそう言った。
彼の体重が私を倒して、天井をバックに彼を視界に捉える。
好きだと言った彼の言葉はなんの躊躇もなく私の心に入ってきて、初めからそこにあったかのように存在し始めた。私の中のそれとたしかに混ざりあっていく。
「……黒尾、わたしも、好き」
背中の柔らかさが心地いい。
気がつけば、私の顔のすぐ側に彼の逞しい腕が置かれていた。
「……いい?」
彼は欲の浮かぶ目で、私を伺うように見下ろす。
「……いいよ」
その言葉が合図のように、私は彼の胃がもたれるような甘さに溶けてしまった。
38人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「ハイキュー」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
依(プロフ) - しおさん» わ、しおさん!!ありがとうございます!!!!!!嬉しいです!!!!!! (2020年5月17日 21時) (レス) id: 1c396819ac (このIDを非表示/違反報告)
しお(プロフ) - コメント失礼しますとてもファンです。いつも素敵なお話をありがとうございます。最高です!!!!! (2020年5月17日 20時) (レス) id: 2d9a1a0004 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:依 | 作成日時:2020年5月17日 20時