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昨夜、行為の最中に私の揺れる肌に一粒を落とした木葉が脳裏に浮かんだ。私の頬や髪を撫で、重ねた指を絡める、歪んだ表情とは裏腹な彼の両の手のひらの優しさが私の胸を締め上げた。

高校の時から続くハッキリしているようで曖昧な関係に私が別れを切り出した昨日、木葉は最後に一度抱かせてくれ、なんて言い出した。大人になろうとした私がそれを許してしまったのは、そういうことなのだろう。


「先に謝るわ、悪ぃ」

じっと私と視線を交わしていた木葉が、私の身体の前に手をついた。シーツが引っ張られて更にくしゃくしゃになる。心にも無さそうに軽く謝罪を述べた彼が、再度私の口から煙草を奪い顔を近づけた。

何度か触れるだけのキスを落とした木葉は、立ち上がって私から奪った煙草をキッチンのゴミ箱へ捨て、それの箱を彼のズボンのポケットへ突っ込む。
離れ際の木葉の顔がまぶたの裏に焼き付いた。昨日の夜とよく似た顔だった。


大人になろうとした私はやっぱりどうすればいいのか分からない迷子の子どものようだった。


玄関に立ち互いに見つめ合う。

「……元気でな」

そう言って小さく笑う木葉はまた私の髪を梳かすように手を滑らせ、頬に添えた。私は自身の手を木葉のそれに重ね、そっと引き離す。

「今までありがとう」


玄関の戸を開けば、柔らかい風が吹き込んだ。木葉に触れられた髪の、頬の熱を冷ますような、彼の一筋の跡が残った頬を撫でるような、優しい風だった。

今朝まで身に付けていたピアスは、私の耳たぶには無かった。

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(プロフ) - しおさん» わ、しおさん!!ありがとうございます!!!!!!嬉しいです!!!!!! (2020年5月17日 21時) (レス) id: 1c396819ac (このIDを非表示/違反報告)
しお(プロフ) - コメント失礼しますとてもファンです。いつも素敵なお話をありがとうございます。最高です!!!!! (2020年5月17日 20時) (レス) id: 2d9a1a0004 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名: | 作成日時:2020年5月17日 20時

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