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「で、お前は?」

目の前の及川が顎を突き出してそう尋ねる。

「んー、……好きだったら?」

好きだったら結婚したい。私がそう言うと当たり前のことを言うな、と突っ込まれた。

「まあでもさ、好きだけで結婚なんて出来ないよね」

及川が妙に悟った口を聞く。それがなんだか癪に触ったので、「好きが前提だけどね」と軽く睨みつけた。

「あ、じゃあ次、こん中だったら誰としたい?」

話が一段落ついたところで花巻がそう投げかけた。

「それは岩泉だべ?」
「岩ちゃんだね」
「俺もそう思う」

即答で岩泉だと言う三人を、俺はお前らなんか嫁にしたくねぇ、と岩泉が一蹴した。
黙って見てるだけの私にまた及川が、お前は?と言わんばかりに顔を向けてきた。

「えー、私は及川、かなあ」

及川と結婚したい、そう言えば一瞬時が止まったように静寂が訪れて、またすぐに騒がしくなった。

「いーや及川はねぇべ?」
「ねぇな」

顔を見合わせて笑っている松川と花巻をよそに、及川は黙りこくった。「及川?」と岩泉が声をかければ、「どういうことだよ」と小さく漏らす。

聞きたいのはこっちだった。急に大人しくなって、何だ。どういうも何も、そういうことじゃないか。それ以上に何が。

「何、及川どうしたの?」

私が声をかけると及川は机に手をついて立ち上がった。


「で、結局何が言いたいの?」

半ばキレたように言われて、思わず体がこわばる。及川の鋭い視線に縛り付けられたみたいに動けなくなった。

「……お前さ、ほんとそういうとこあるよね」

状況が飲み込めずに黙っていると、及川はそう言って座り直した。ふい、と窓の方に顔を向けた及川の耳が赤い。

「ほんと、そういうとこ」

及川が右手でパタパタとふてぶてしい顔をあおぎながら、ため息混じりにそう言った。



私は何かを知っているかのようにニヤニヤと笑っている松川のことは知らない振りをする。
及川が不意に見せた初めて見るその表情に、高鳴った心臓の鼓動が耳にまで届きそうだった。

忘れもの【木葉秋紀】→←かくしごと【及川徹】



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(プロフ) - しおさん» わ、しおさん!!ありがとうございます!!!!!!嬉しいです!!!!!! (2020年5月17日 21時) (レス) id: 1c396819ac (このIDを非表示/違反報告)
しお(プロフ) - コメント失礼しますとてもファンです。いつも素敵なお話をありがとうございます。最高です!!!!! (2020年5月17日 20時) (レス) id: 2d9a1a0004 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名: | 作成日時:2020年5月17日 20時

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