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#19 ページ19




あれから、Aさんが回復に向かうことはなかった。

もうすぐ雪が降ろうかという頃には、起き上がることもままならない日ができてしまうほど体力は落ちていたし、痛みに耐えている時間も前よりずっと長くなっていた。

面会が断られる日もできたし、俺と木兎さん以外は、もう見舞いに出向くことも無くなった。

Aさんが人と会うことで神経をすり減らすのを防ぐためでもあったが、それ以上に誰もが消えてしまいそうなAさんの現実を目にしたくなかったのだと思う。


実際、俺や木兎さんが見舞いに向かっても、意識が朦朧としていたり、苦しそうにもがいていたり、ある日は眠っていたり。

見ているだけで辛かった。


木兎さんの心中を察することなど、到底不可能だ。
木兎さんはどんな気持ちで、Aさんの手を握っているのだろう。

ただひとつ言えるのは、誰もがAさんがまた元気になって、そして春高を見に来てくれると、そう信じていたということだ。


そんなある日、俺はAさんに電話をもらった。

「あ、もしもし、あかあし。便箋と、封筒、と筆記用具、……持って、来てくれない?」

「はい、わかりました。帰りに行きます」

「ありがとう、ね」


ゆっくりゆっくり、小さな震える声でそう言われた。
今日は幾分調子がいいみたいだった。

大方、木兎さんに手紙でも書くのだろう、と予想はついたが、でもそれが何を意味しているのか。


用事があるので、と木兎さんと別れて1人で病院に向かう。


がらがら、とゆっくり病室のドアを開けると、起き上がっていたAさんと目が合った。


「Aさん、無理しないでください」
驚いて駆け寄った。

「ううん。今日は何か調子良くて」

俺は恐る恐る気になっていたことを口にした。
こんなこと、聞いていいものか迷ったが、聞かずにはいられない。

「あの、手紙は、どういう、」

俺が最後まで言うまでに、Aさんが口を開いた。

「赤葦、私ね、もう、ダメみたい」

初めて俺に漏らした弱音だった。
俺が一人で来たのも初めてだったが。

そんなことはどうでもよくて、それよりも、ダメ、なんて。

「Aさん、そんなこと言わないでください」

俯いたAさんの目から雫が落ちたのが見えた。
生きることを諦めているようには見えなかった。




「Aさん、みんな、信じてますから」



俺がそう言って、柔く握った手を、Aさんは握り返してはくれなかった。



ただ、寂しそうに笑っていた。

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Rikka(プロフ) - 瑠衣さん» そんな風に言っていただけて本当に嬉しいです(;_;)ありがとうございます!完結までお待ちください、! (4月11日 18時) (レス) id: 1c396819ac (このIDを非表示/違反報告)
瑠衣(プロフ) - 泣きました。涙が止まりませんでした。これからも頑張ってください。応援しています。 (4月10日 20時) (レス) id: 44c29d146e (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:Rikka | 作成日時:2020年3月23日 22時

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