たとえ何かを失っても｡【紫】 (ページ10)

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Ep.9 ページ10

.Hikaru Side

「突発性難聴…？」

ふっかが画面を見て一言放った。

検査が終わってまた診察してもらえば結果が出た。

診断結果は突発性難聴。

聞いたことはあったけど、まさかふっかがなるとは思ってもいなかった。

「深澤さんの場合だと、ストレスや睡眠不足、精神的疲労から来たものでしょう。最悪の場合、話す事が困難になるケースもあります。」

「え…。でも…最悪の場合ですよね…？」

「まぁそうなんですが…。岩本さん、とおっしゃいましたっけ？」

「あ、はい…」

「深澤さんは、このケースに陥る可能性が通常よりもやや高いと思われます。ですので、今から手話などを習得した方がいいかと…」

…俺は結局何も知らなかった。

ふっかが1人で苦しんでた事も、辛かった事も。

俺が知ってるふっかはいつでも明るい。

でも今横に座っているふっかは悲しそうな表情で、

目を離せば消えてしまいそうだった。

俺は助手席に疲れて寝たふっかを乗せながら帰った。

すげー恥ずかしいけど、1人で静かに泣いた。

隣で寝ているふっかを横目で見る度に

このまま目を覚まさないんじゃないか

ふっかともう話せなくなるんじゃないか

そんな事ばかり頭の中によぎって消えていく。

メンバーにはもちろん、滝沢くんにも伝えなきゃいけない。

となれば、必然的に説明するのは俺だ。

ちゃんとふっかの気持ちを伝えなきゃいけないし

皆にも理解してもらう必要がある。

ここは俺が頑張る番だな。

家に着いてもふっかは起きなかった。

家まで俺がふっかを担いで、ベッドに寝かせた。

降ろしてリビングに向かい、

ふと目に入った半開きのテーブルの引き出し。

開けたら色々やばいんじゃないかって思ったけど、

俺は意を決して開けてみることにした。

そこには、先の方に血がついたカッターと

いつ書いていたのか分からない遺書が入っていた。