たとえ何かを失っても｡【紫】 (ページ9)

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Ep.8 ページ9

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最近病院に来ていないからなのか、

俺の心臓は大きめに違う意味で高鳴っている。

もちろんそれは、緊張で。

隣では照がずっと手を握っていてくれて、

とりあえず来た耳鼻科の待合室に座っている。

病院特有の匂いがツンと匂っていて、

これから起こることを暗示しているかのようだった。

名前を呼ばれても分からないから、

照が目を合わせてくれて診察室に入った。

何も聞こえなかったけど照が全部説明してくれたっぽくて、

お医者さんがパソコンに文字を打って俺に見せる。

" 深澤さん、検査しますね "

たったその10文字程度の文が凶器に見えてきて、

俺は怖くて逃げ出したかった。

でもこれ以上メンバーに迷惑かけてられないし、

頷いて照に介助されながら検査室に向かった。

一通り検査が終わってまた待合室で診察を待つ。

すると照がスマホに文字を打ち出して俺に見せた。

" 結果がどうであろうと、俺はふっかの味方だよ "

その文を見た俺は泣きそうになって、

いや、ほとんど泣いてたんだけど。わら

照を見ればいつもの笑顔で返してくれる。

あぁ、俺って周りの人に恵まれてるんだなって

改めて思ったし、これから何が起きても照がいるって思えば

悪い結果も受け入れられるって前向きになれた。