【呪術廻戦】もう一度その声で名前を呼んで。2

星霜の切望は ページ45

(Aside)

『え、なんで？嘘、なんで知ってるの？だって秘密にしてて、迷惑かけないようにって…』


「迷惑なわけないだろう...！？心配なんだよ、Aが。誰もAと引き換えに貰う命なんて欲しくないよ…！」


傑兄が言った言葉は全然理解できなかった。

分かんなかった。

なんでよ、いいじゃん、生きてよ。

俺ひとりでみんな生きていられるならそっちの方がいいじゃん。

五条さんだってああ言ったけど俺の怪我より恵くんの怪我の方が大事だよ。

俺はとっくに死んでるはずで、色んな人にいっぱい助けて貰って、俺は何も出来てない。

全部俺のせいにして、いっそ嫌ってよ。

お前のせいだって言ってよ。


その方が、だってその方が。




楽じゃないか。


心配されたら足が止まっちゃうんだよ。


死にたくないって思っちゃうんだよ。


もっと一緒にいたいって、もっと生きたいって、そう思ったらダメなんだよ。


みんなを助ける上で邪魔な感情になるでしょ？



『俺は充分すぎる程助けてもらったよ…今度は俺の番なんだから、俺なんてここにいることさえなんでかわかんなくて……俺は、必要ない、要らないから…！

だからせめて必要なくても助けさせて。俺なんか要らなくても、水晶は持ってて。死なないで…！』


雫は止まらない。

ずっと俺の目から零れ続ける。

こんなやつお荷物でしょ。

知ってるよ、俺なんていなくてもきっと全部上手くいくって。

でも助けられずにはいられないの。

大事な人が、大切な人が助けを求めてるなら、手を伸ばすしかないじゃん。


それしか俺ができることってないじゃないか。


目障りだと言うのなら、一思いに殺して。








「おい、何を言っている？誰に許可を得てそんな言葉を口にしているんだ？」



背中に汗が伝った。

今まで冗談とかで怖いこと言われることはあったけど、本気で怒っているような、苛立ちを隠さないような。


初めて聞く、兄上の声。



「誰が必要ないと、お前の存在が要らないと言った？それを明言したやつがいるのか？なぁ、言ってみろ。」


いないよ、そんな人いない。


優しい皆はそんなこと言わないよ。


だけどちょっと考えたらわかるじゃん。


だって俺は、ここにいるはずじゃなかった存在だ。


要らないはずの命だ。


それなら、みんなのために有効活用した方がいいじゃんか。


俺は、いらないじゃないか。

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