# ページ38
(半間修二side)
乾いた笑いしか漏れなかった。
宵闇Aがいるとそんな笑いばかりだ。
頭の中は大混乱で、なんでこうなったか検討もつかない。
「…稀咲、オレは聞いてねぇぞ。」
思わず稀咲の胸ぐらを掴んだ。
「なんのことだ？」
「っ…宵闇だよ、宵闇A！」
口に出して、馬鹿みたいだと思った。
なんでオレはこんなに必死なんだ？
なんでオレは宵闇Aのヘアピンをポケットに眠らせていて、どこかで会うことを期待していた？
そんなものの答えはもう、出ていたけど。
「そっちの方が合理的で死ぬ確率が高かったからだ。既に刺されていたし、マイキーの"大事な人"ってことは分かっていたからな。それに、丁度いいところで宵闇Aを殺したいって奴が現れたからそいつに任せたんだ。…問題でもあるのか？」
その言葉に手を離す。
「…いや、悪ぃ。」
「？…ああ。」
そうだ、問題なんか何もないだろ。
その、はずだろ。
本当の答えもわかっているのに、何度も何度も頭の中で繰り返してしまう。
オレはAが今生きているのかも知らない。
血だらけのAは穏やかな顔はしてなかった。
だけれど、何故か死を怖がっているようには見えなかった。
なんで、なんて思っても心当たりは節々あった。
もしかしたら、死の恐怖を何度か味わっているのかもしれない。
死ぬかもしれない、と思うこと。
きっとキヨマサに刺されることも怖かった、はず。
そう仕掛けたのは他でもなく稀咲…いや、ウチだ。
こうなるはずじゃ、なかったんだ。
Aじゃなくて、ドラケンのはずだったんだよ。
こんなの言い訳になんねぇかもしれないけどさ、ほんとに、ほんとに。
Aのはずじゃ、なかったんだ。
なんでオレ、言い訳してんだろ。
なんでこんなに虚しいんだろ。
なんで、なんで、なんで。
そんなこと考えても言っても、何も変わりはしないのに。
ハンガーにかかった、黒のオーバーサイズのシャツ。
まだこれも、ヘアピンも、返してないんだからよ。
死なれたら困るんだよ、ほんとに。
少しだけ、ふわふわしたAの匂いが漂ってそれがまた虚しさを加速させる。
今はただ、生きてることを願うだけだった。
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なんばん - すごく面白いです！ドストライクです！書いてくれてありがとうございます！これからも頑張ってください！ (2021年6月2日 1時) (
レス) id: 0eb447a2e9 (このIDを非表示/違反報告)
Kira(プロフ) - いつも読ませていただいてます。面白くて大好きです。これからも頑張ってください!! (2021年5月31日 17時) (レス) id: 5ee4acc04b (このIDを非表示/違反報告)
るい - とっても面白いです！！ (2021年5月29日 1時) (レス) id: b95688f803 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：だしまきたまご | 作成日時：2021年5月18日 2時
