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《「A。」》
随分低い、声だった。不機嫌そうな、静かに怒っているような。そんな…声。
『な、なに…』
自然と声が震える。
《「なんで言わねーの。ヘアピンなんてどうでもいいんだよ、あんなのいくらでも買える。…だけどさ、Aは違うだろ。替えなんかきかないから。」》
こういうところがなんとも、ずるいと思う。
泣いちゃうじゃんか、マイキーのばか。
『…あり、がとう…』
《「…なんでそんなに声ちいせぇの、泣いてる？」》
『泣いてないし！！』
ほんのちょっとだけ、涙目だけど。
涙目は泣いてるにカウントしないし。
だから全然、泣いてないんだよ。
『…怒られるって思った。それか失望されるかなって…』
《「なんで？Aが大事にしてくれてたの知ってるし。無くしたのはそれ相応の理由があって、思い詰めてオレに電話かけるくらい必死だったんなら言うことないっしょ。」》
きっと電話の向こうのマイキーは、笑顔なんじゃないかなって思った。
そういう人だから。
《「…最近、寝れねーの？」》
『うん、まあ…少し。』
倒れたのはほとんど刺されたせいだと思う。
だけど寝れないと言うことも本当のことで。
悪夢を見る。
内容は様々で、ほとんど俺が前に体験してきたことだ。
空を落ちる時の浮遊感、鈍い痛み。
苦しそうなマイキーの顔、俺の首を締める手。
真一郎くんを庇って殴られた頭の痛み、頭が真っ白になるあの感覚。
鈍器で殴られることは多々あって、その度に大事な人の、大切な人の悲しそうな、苦しそうな、辛そうな…負の感情を見る。
それが俺には何にも変え難いほど胸が痛くなるのだ。
《「…調子悪ぃなら明日無理して来なくてもいい。」
『っそれは、やだ…』
嫌だ、嫌だ。それは嫌。
絶対行く、何があったって絶対絶対、絶対行く。
俺の幸せ、束の間のものでもいいんだ。
それくらい、叶えたって。
マイキーと一緒に花火を見ることくらい、叶えたって。
…いいでしょ。
《「Aがいーならなんでもいーけど、無理すんなよ。…倒れるとか、心臓に悪ぃし。」》
これが、マイキーなりの心配で、それで充分。口に出されなくたって、気持ちだけでも。その一時、俺を考えていてくれると思うと幸せだ。
『無理してないし。大丈夫だよ』
《「…でも愛美愛主ん時もさー」》
そこから始まったマイキーのお説教みたいな言葉にちょっと笑って。
明日、何も無ければいいのになぁ。
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なんばん - すごく面白いです！ドストライクです！書いてくれてありがとうございます！これからも頑張ってください！ (2021年6月2日 1時) (
レス) id: 0eb447a2e9 (このIDを非表示/違反報告)
Kira(プロフ) - いつも読ませていただいてます。面白くて大好きです。これからも頑張ってください!! (2021年5月31日 17時) (レス) id: 5ee4acc04b (このIDを非表示/違反報告)
るい - とっても面白いです！！ (2021年5月29日 1時) (レス) id: b95688f803 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：だしまきたまご | 作成日時：2021年5月18日 2時
