働け、魔法少女！ (ページ50)

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気を取り直して食堂のカウンターへ進む。

「えーっと、すいませーん」

「ほいほ〜い、」

キッチンの奥の方へ声を掛けると、此方に背を向けてフライパンを洗っていた中肉中背の男性が振り返って、のんびりと歩いてきた。

「此処を利用するのは久し振りじゃな〜い？バイオネットちゃん、元気？」

「へへっ、元気ですよ！でもお腹すいちゃって、揚げチーズボール下さい！」

「了解よぉ〜、揚げるからちょっと待っててねぇ」

おじさんと言えるぐらいの年齢の男性、その人は女子のような口調で、にこっと笑ってキッチンへ戻っていった。

なんでも食堂のおじさん呼びが定着しているあの人は、元ヒーローであり、シェフを目指していた矢先にヒーローになって忙しくなり嘆いていた所を、運営さんが目を付けて仕事を減らし厨房で働かせた所、余りの絶品さに運営さんを感涙させたらしい。

その食事の美味しさを皆と共有したいとの事で作られたのがこの食堂、と先輩のヒーローから此処を利用している時に聞いたことがあった。

噂話なので嘘か本当かは兎も角、運営さんが絶賛した味とだけあって本当に美味しい。

家庭的でほっこりするような味も、高級レストランのような味も、はたまた屋台のラーメン的ジャンクな味わいすらも自由自在に操れるという、食堂のおっちゃん。その実はおねえ口調。

ヒーローには濃い人間が多い。

私は、油がぱちぱちと弾けるような音を聞きつつ、テーブルに座ってうきうき気分で完成を待った。