働け、魔法少女！ (ページ38)

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厳しさと優しさページ38

「…………はぁ～………」

「辛気くさいため息を付くな。あと声が大きい」

ニイルさんの注意に、私は慌てて口を両手で塞いだ。

場所は生徒会室。あの会議の後、呆然と立ち尽くす私を他所に、興味を失ったように視線を外し、逆に面白そうに意地の悪い笑みを浮かべ、または申し訳なさそうに怯えながら、役員さん達は三々五々の様子を見せつつ部屋を後にしていった。

殿下は残るつもりだったようだが、誰か人に呼ばれて行ってしまった。よって、今この部屋はニイルさんと私の二人しかいないのである。

……気まずい、とても気まずいッツ!!

ニイルさんは先程の会議で、私が生徒会に入るのを一番強く反対していた人だ。そんな人と二人きりなんて、何を話せばいいのか分からないどころか、何を言ってもアウトな気がする。

……あぁぁぁ、空気が重いよ。

私が内心悶えてつつ固まっていると、見かねたのか私に背を向けて本棚を漁っていたニイルさんが歩いて近づいてきた。

「………サヤベル·スメット、一つ頼まれてくれないか」

「ふぁっっ、はひっ、はい!?」

余りにもびくびくしていたせいで奇声を上げてしまった。今すぐ逃げたい。

「貴様は返事もまともに出来ないのか?……はぁ、先代の書記が残した仕事を片付けて貰いたい。仮とは言え、生徒会に人を余らせておく訳にはいかないし、私は貴様が何であろうと他の生徒会役員と公平に扱う。つまり仕事をしてもらうのは道理だ」

「あ、えーと、はい」

「……それと、その聞くに堪えない言葉遣いをなんとかしなさい。殿下の前だけではない、この学校は品性を重んじる場所。生徒会役員として相応しい態度でいるように、いいな?」

「は、はいっ!…………その、ちょっと良いですか?」

……何だろう、ニイル先輩って………言葉は強いしいつも怒ってるみたいだけど、優しいというか………ちゃんと私の事を見て、気遣ってくれてる気がする。

「……なんだ、端的に言え」

「その、今の……メモ、メモしたい、ので、もう一回お願いします!」

それでも怖くて、途切れ途切れながらも言ってみる。

その赤い瞳をぱちぱちと瞬きさせていたニイルさんは、私をまじまじと見て、ややあってふ、と口角を上げた。