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その頃、書庫がお気に入りの場所の一つになったナグモはそこで本を選んでいた。自身が趣味で読む本を探すついでに、自分なりに答えを探そうと好意に関しての本があればと探していた。
「(でも、本に書いてある事なのかなぁ)」
以前彼は鬼ごっこの際に鬱とロボロから好意があると言う事を流れで聞いてしまっていたが、あの時点では単に好いてくれた事が嬉しくは思っていたが恋愛的要素は感じていなかった。お茶会でそんな話題が出ても未だに気付かずにいて、事情を知らなければ鈍感に見えるだろ。話は戻り、そんな本を探そうとして検索ワードをどうするかと首を捻っていればピタリと動きが止まる。
「……誰ですか?」
「え、よぉわかったなぁ」
驚きつつも嬉しそうに本棚の陰からチーノが顔を出せば、彼の気配を感じていたナグモは警戒を解き緩い笑みを見せる。
「すいません。ソッと近づいてきたのに気づいて、つい少し警戒しちゃって」
「そっかぁ。集中しとったみたいやから、少し脅かそう思ったんやけどな〜」
「それでですか……」
「うんっ」
悪戯っ子の様な表情で楽しそうに声高なコロコロとした笑い声を零しながらナグモの傍に行く。眼鏡の下で、彼の目線はナグモの持つ本に自然と行く。
「色んな本持っとんなぁ。小説に歴史書……。うわ、それとかそこそこ昔のやない?」
「過去の戦争を記載した1冊みたいで、勉強を兼ねて借りようかと」
「ナグモくん真面目やなぁ」
「チーノさんの方こそ。ぼくよりいっぱい借りてるじゃないですか」
チーノの足元には籠に入っている大量の本があった。内容は全て把握出来ないが軍事内容が記載された物を含め、様々な分野の書籍だ。それを見られたからか、「あ〜……」と声を洩らして少し恥ずかしそうにしている。
「結構な数ですけど、これ全部借りて行くんですか?」
「うん。って言うのも、俺の仕事っちゅうんが主に交渉とか話する事が多いから。色んな事、頭に入れとかんと相手の話に付いて行かへんからね」
「交渉役に就いているなら、その役割で覚える事沢山ですよね」
「やから毎日仕事しつつ勉強漬けなんよなぁ……。でも2人来てくれはったから、幾らか時間取れてマシにはなったんよ」
「本当ですか?ぼく達が皆さんのお役に立てているのなら、凄く嬉しいです」
ふわりとした穏やかな笑みをチーノに向ければ、Aとやはり双子の様だからか表情が近くドキリとした。
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作者名：米（よね） | 作成日時：2023年5月11日 12時
