> ありふれた日常を ページ3
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『う〜〜ん⋯』
「ちょっと、どうしたのよ？」
昼休み。
ユナと行った購買で購入した、紙パックのミルクティーを握りしめて、勢いよくストローで中身を吸いながら、窓の外を眺める。
雲一つない晴天。春が終わったばかりだというのに、真夏のような蒸し暑さを感じる。
私の隣の席の主は、大体昼休みの時間は不在だ。多分、今頃ミンホくんは、よくクラスに遊びに来るヒョンジンくんのクラスにいるんだろう。
そして、今の私の悩みの種は他でもない彼なのであった。
『あんな噂が流れてるのに、普段と何ら変わらなくて、びっくりしてる。むしろなんだか⋯』
「なんだか？」
『いつもよりキラキラして見える、気がした』
認識の問題なんだろうか。
普段ここまで彼のことを凝視することは無いが、改めて見るとやはり目鼻立ちがしっかりしていて、驚くほど綺麗な顔をしている。
授業中にそんなことばかり考えていたせいか、ぼんやりしていて、当てられても上手く答えられなかった私に助け舟を出してくれたり、分からないところを要領良く教えてくれたり。
彼が、どうとか。そんなこと以前に、既に片足がハマっている私が、どんどん彼の魅力にハマってしまい、完全に抜けられなくなる方が早い気がしてきた。
「あっ、あれチャンビンたちじゃない？」
『えっ』
窓際から見える、渡り廊下。
隣の棟に繋がっているそこには自販機があって、そこで男子生徒が固まっているのが見えた。その中には、陽の光を浴びて、キラキラ反射する茶色が見えて。
大きな瞳と、視線が交わった気がした。
その瞬間に、彼がふんわりと笑った気がして、思わず周りの目も気にできないくらいに、見入ってしまっていた。
すると、彼の口元が動いたので、私は目を限界まで細めながら、じっとその口の動きを読んだ。
＿＿＿見 す ぎ じゃ な い ？
ゆっくりと、発音された言葉は、きっと私に向けられたものなんだろう。そう、勝手に勘違いしてもいいだろうか。
気が付いたら、火がついたように顔が熱くなって、パッと視線を逸らすようにして顔を伏せてしまった。でも、我慢できなくて、もう一度窓の外を覗くと、ミンホくんは心底面白そうに口角を上げて笑っていた。
「顔、真っ赤だけど大丈夫？」
『⋯うん』
ねぇ、イ・ミンホくん。
あんまり期待させるようなことばっかりしないでよ。そんなに特別な視線を向けられちゃったら、私、勘違いしちゃうよ。
もしかしたら、ミンホくんが好きなのは、私なんじゃないかって。
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作者名：雨雲 | 作成日時：2024年4月14日 19時
