入学式前に部活推薦で入る人は別館1階に集まれとのこと ページ2
「お、部活推薦の新入部員か?」
迎えてくれたのは、なんだかどっしりした人だ。めちゃくちゃ背が高いわけでもないけれど、雰囲気的に、落ち着いている感じがする。
「はい。ユーフォやってました、早川美波です」
「俺は澤村大地。楽器はチューバで、部長やってる。よろしくな!」
「よろしくお願いします」
顔には出さないようにしているが、心のなかでは大興奮である。吹奏楽部では珍しい男子部員がこれだけいる上に、部長は男子。そして澤村部長とチューバのマッチ度半端ない。
「ユーフォって言ったよね?」
「はい」
「良かった、毎年ユーフォ決めるの時間かかるんだよな」
はい、分かってます。ユーフォはだいぶマイナーな楽器だ。最近、主人公がユーフォを吹く小説で少し有名になったけれど、未だに聞かれる。
『何の楽器やってるの?』
『ユーフォだよ』
『UFO?』
多分、トランペットとかトロンボーンとかクラリネットとかそういう有名な楽器を期待してるんだろう。ごめんね、期待に添えなくて。そんな罪悪感は抱くけれども、私はユーフォが好き。だからこそ中学3年間、そして高校でも続けようと思えたのだ。
などと考えていると、澤村部長が「くろお」さんを呼んで、不審者感が半端ない人が来た。
「どーも、ユーフォの3年の黒尾鉄朗です」
「早川美波です。よろしくおねがいします」
「黒尾、後輩で遊ぶなよ」
「俺のことなんだと思ってるの?」
2人の先輩がちょっとだけじゃれた。仲がいいんだと思う。
「じゃあ、ちょっとこっち来てくれる?2年もいるから、紹介だけしとくわ」
「はい」
黒尾先輩は背が高い。そして足が長い。さらに髪がすごい。楽器を避けつつ奥の方に向かう黒尾先輩についていくと、そっちの方にユーフォを持った人がいた。
「あ、遅かったですね」
「まぁな」
その2人の会話で、黒尾先輩が私に合わせて気持ちゆっくりに歩いていた事に気づいた。いやこれはモテますね。
「俺は赤葦京治。困ったときはいつでも頼って」
「ユーフォはこの三人な」
「はい。早川美波です。よろしくお願いします」
挨拶も済んだところで、ひとまず入学式に向かうことになった。この朝の時間は顔合わせ、かつどのくらい部活推薦がいるのか、そしてどの楽器に何人新入生を入れるかを見極めるためのものだったらしい。
またね、と手をふる先輩方にお辞儀を返して、一年の教室へと向かった。
明るい子に話しかけられてボッチを回避したい→←Attention
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作者名:リリアーネ | 作成日時:2022年2月6日 18時