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「Aさん」
『……AA、寝てます。』
「あら大変、嫌われてしまいましたね」
枕に顔を埋めて、感覚を遮断する。
…羽織の裾を引くのが、癖になってたなんて知らなかった。この気持ちはなんなんだろう。
心の距離を感じて寂しい？ のかな。
私が人を嫌いになれないのをわかってて、そう言うんだから、やっぱりしのぶさんは意地悪だ。
『……むぅ。』
「拗ねてるんですか？ ごめんなさい、貴女の反応が可愛らしいからつい。」
継子のカナヲちゃんが表情に出るタイプじゃないから、多分その反動なんだと思う。
いや、何にしても私で遊ぶのはやめてほしいが。
「瓢箪を吹いて破裂させられるのは、全集中の呼吸を常中出来ている証みたいなものです。」
『っ、……ということは』
「はい。私もカナヲも破裂させられます」
『…炭治郎たちは』
「出来ませんね。」
……そこの差だったんだ。
カナヲちゃんに届かなかったあと一歩って。
枕から顔をあげて、ベッドに座る。
いつまでもしょげてる訳にもいかないし。
『……任務、もう行ってもいいんですか』
「？？ よくわかりましたね。」
首を傾げるしのぶさんに、『勘です』と返した。
「ただ、Aさんの場合…身体が硬すぎますから、定期的にほぐされに来てくださいね。
なんなら1任務ごとに来てほしいくらいです」
『えぇ……嫌ですけど、わかりました。』
そうと決まれば、刀の手入れを改めてしよう。
この部屋を綺麗に片付けて、あと、毎晩夜食を作るのに厨を借りたから、食材の買い出しも手伝って。
「仲直りはしなくていいんですか？」
『……しのぶさま、直球でものを言いますよね』
「Aさんも似たようなものでしょう。
ひとの地雷を踏むって、言われたことありません？」
『どういう意味ですか！？！？』
この言い草から鑑みるに、どうやら私はしのぶさんの地雷とやらを踏んだことがあるらしい。
それは申し訳ない。
『………仲直り、かあ』
だって、別に喧嘩をしたわけじゃない。
逆の立場なら絶対に同じ反応をしてしまう。だからしょうがない。
勝手に傷つく方が悪い……とは言わないけど、傷つきやすさはどうにかしないとね。
『もうちょっと考えてみます。』
「わかりました。」
もっと、強くならなくちゃ。
そうしたらきっと、皆と並んで歩けるよね。
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作者名：朝餉。 | 作成日時：2021年8月14日 17時
