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(side ??)
今夜も、鬼狩りとやらが此処に来たらしい。
よく懲りないな、と思う。
いいえ、おかげで私は仕事が貰えて、幸せな夢を見させてもらえるから、寧ろ感謝しているくらいだけど。
身体が重い。夢の中なら軽いのに。
頭が痛い。夢の中なら、感じないのに。
夜闇を反射した車窓に写った私の顔は、今にも死にそうに痩せこけて、見るに堪えない顔をしていた。
ああ、そうだ。病気で死ぬ直前の、母の顔に似ている。
嗚呼。夢の中なら。
『すぅ……』
今晩の生贄は、変わった髪色をした女だった。
あのひとに貰った錐を片手に、その女の腕と、私のそれを縄で繋ぐ。
――この女を殺せば、それで夢が見られる。
幸せそうな寝顔を見ているだけで腹が立った。
不意に手が触れた女の羽織は、一瞬指が掠めただけでも分かるほど、上等な物で。
あぁそうか。
この女は、綺麗な顔に、金まで持ってるのか。
それでこんなに、満たされた顔で眠っているのか。
苛々する。
鬼狩りがなんだ。
正義の味方でも気取ったつもりか。
ただ運が良かっただけの癖に。
私たちに振りかからなかったものを、掠めとっただけの癖に。
妬ましい。妬ましい。
……ああ。
でも。
私だって、ひとたび夢の中に入ったのなら。
○
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作者名:朝餉。 | 作成日時:2021年8月14日 17時