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ガタゴトと揺れる車両に、石炭の独特な匂い。



『わ、…』



なんだか懐かしい。

家出をしてから、鬼殺隊に辿り着くまでの旅の中で、1度だけ列車に乗ったことがある。

あの時は、切符の買い方を駅員さんに聞いて、ひとりでずっとソワソワと、

そうそう、丁度いまの伊之助みたいに…






…………って!!!!







『ばかばかばか!! なにやってんの?!?!』

「すげぇすげぇ!! 速ぇええ!!!」


伊之助が窓を全開にして、大きく身を乗り出す。ほんとに何やってんの!?


『座りなさいこのあんぽんたん!!』

「俺外出て走るから!! 競走する!!」

『っ、ああぁ〜もうッ!!』



気持ちはまあ、わかる。分かるよ!
私も初めて乗った時ワクワクしたけど!!



「危険だぞ! いつ鬼が出てくるかわからないんだ」

「え」



煉獄さんの言葉で、伊之助が一瞬固まった。
この隙に力を込めて、席に座り直させる。良し、もうおとなしくしててね。



「嘘でしょ鬼出るんですかこの汽車!!」

「出る!!」

『ですよねぇ…』



あ〜やっぱり〜。と、煉獄さんの言葉に頷いていると、善逸くんの顔がみるみるうちに青褪めていく。



「Aちゃんが言うってことは…マジなんだ…っ!
嫌ァーーーッ!! 俺降ります!! Aちゃん、一緒に降りよう!」


『残念ながら、この列車は急行だよー』




騒ぐ善逸くんを宥めるように、ぽんぽんと頭を叩いた。
叩けば叩くほどって、師範も言ってたからね(?)。

鬼の気配を探っているのか、隣にいる伊之助も幾分か大人しくなって、
これで漸くほっと一息、かも…




「…切符……拝見…いたします…………」




そう思った時。


奥の車両から、車掌さんが現れる。
ふらりとした足取り。青白い顔。


列車に乗車したばかりにも感じた、“小さな悪意”の気配を感じて、私は眉を顰めた。




『ありがとうございます! …なんだかお疲れみたいですね? 大丈夫ですか??』


「…いえ……。仕事…ですので……」




善逸くん、伊之助、炭治郎、そして私の順番に切符を切ってもらう。



パチリ、。



その音がやけに耳について、







「拝見、しました………」









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作者名:朝餉。 | 作成日時:2021年8月14日 17時

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