《肆》望むは金。 (ページ39)

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「…私のお願い事も聞いてくれますか？」と、しのぶさんが問う。
嫌な予感がしなかったので、私は二つ返事で頷いた。

『？？何か御用でしょうか？
このAA、暇を持て余しているので、なんだって承りますよ！』

「それは嬉しいです！
ではAさん、もう一度採血させてください」

『………え゛っ！？嫌です』

「何でも承るんでしょう？ちょっと腕を貸すだけじゃないですか」

『や、やだあぁ〜っ！！！！』

うぇぇええんっ！と、私が泣いている間に、
しのぶさんは手早く支度をして、私の腕に注射器を刺した。

忍び寄って蜂のように刺す！言ってる場合じゃない！痛い！！
だ、第六感の嘘つき！！痛いのヤダって言った！！言ったのに！！

しのぶさんもしのぶさんだよ！美人で柱だからって！！今日という今日は、

「はい、終わりです！痛かったですねぇ。偉いですねぇ。
よく頑張りました！
ご褒美にカステラがありますよー」

『！！！！か、カステラ！？！？えっ、い、いいんですか！？わあぁ〜っ！
ありがとうございます！！！』

……っっっだ、大好き〜！！！！しのぶさん万歳！！！！！！

注射器を仕舞って、微笑むしのぶさんが途端に眩しいものに見えはじめる。

『わぁ…えへへ、カステラだぁ…』

「扱いやすさと言い、本当に似てますね…」

『えっ誰にですか？』

「ご自分で考えてください」

呆れた目をしたしのぶさんが去っていく。
残るのは疑問と、ひとりで食べきるには多い長箱の中のカステラ。

『……みんな呼んで、お茶会かなぁ』

……しのぶさんから貰ったカステラは上等な品で、
独り占めしてしまえば良かったという発想が後から頭を過ったこと。

そして、お茶とお喋りを楽しんでいる間に大半を伊之助に食べられてしまったことを、ここに記しておく。

私は心の広い女だと自負しているが、今回ばかりは許さない…
…嘘、楽しかったから許す。

貧血気味だからといって、短気は損気。

福の神さまに見離されないように、ある程度の広い心は持っていたいよね！

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