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突然叫ばれたことに驚いて、反射的に距離をとる。
対する善逸くんはどうかというと、
「はァ、はあぁ……っ! よく耐えた、俺!!」なんて呟きながら天に両拳を突き上げていた。

いったい何と戦っていたと言うのか。



『……?』


駄目すぎって何だ、そもそも文法的にありなの??


『手繋いだだけじゃん』

「だ、だけ!?!? 手繋いだ“だけ”っつった!? いま!!」

『えっ、そんなにいけないこと…?』


「いやさっき駄目すぎとか言ったのは手を繋いだってことよりかこの深夜密室ふたりきり三拍子揃った状況下であんな可愛い顔して俺に触れてくるのがやべえって話だったんだけど

、、まあそれは置いとくねっ!」


『ごめん、早口過ぎて何言ってるか全然わかんなかった…!!! もう1回言って!?』

「言わなぁい♡」




……なんか、今日の善逸くんは、こう…ムカつくな。

私が脳内で思ったことを察してか、善逸くんは慌てた様子で、わざとらしい咳払いをした。


「ウォッホン!」

『わぁ、似合わないね』

「どういう意味だよ!!!」



結構前に善逸くんに言われたけれど、…すぐ話が逸れるのって、本当に私のせいなんだろうか。

善逸くんにも多少なりとも責任があると思うけど…?




「いいか、Aちゃん。女の子と手を繋ぐのはな、すげえ難しいんだぜ」


『へぇーーー』

「いま死ぬほどどうでもいいなって思ったでしょ……」



死ぬほどどうでもいいし、何の話を聞かされているんだろうと思うよ。

それでもぼんやり話を聞いていると、
曰く、善逸くんはこれまで女の子と手を繋ぐ…どころか触れさせてもらったこともないらしい。



「おかしいと思わない??」

『いや……自分の耳に従わない善逸くんも悪いと思うけど』


私は第六感の言うことをちゃんと守るもん。
痛い目みたくないからね。



『でも善逸くん、いつも気がつくと私の手握ってるじゃない』

「君が隙だらけなの!!! あと危なっかしいから! つい手を出しちゃうわけで!!!!
アッッッ、今の手を出すっていうのは決して変な意味じゃないからね!!? 言葉の綾だよ、言葉の綾ぁ!!!」

『へぇー』


半分くらいは何言ってるかよくわかんなかったけど、まあいっか。
「聞いてなかったでしょ今ぁあ!!」という叱責も聞こえないフリで。

そこら辺は私、なんでもいいよ。

もう一度手を繋ぎ直してにんまり笑うと、
善逸くんが真っ赤になって、悔しそうな顔をした。






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作者名:朝餉。 | 作成日時:2021年8月14日 17時

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