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善逸くんが登場してから、獪岳さんは更に酷い顔になった。わぁ、人間の眉間ってそんなに深い皺が出来るんですねぇ。
「っ………」
『ぅぐぐぐ……、』
そんな獪岳さんを逃がさないように腕を掴んでいると、
当然獪岳さんは私の手を引き剥がそうと躍起になる。
思いがけず取っ組み合いのような体勢になってしまった。
『あああっ、手がギリギリ言ってます! 痛いです!!』
「だったらさっさと離しやがれ! クソガキ!!」
『……というか、これは既に隊律違反なのでは?! 暴力反対っ!』
「どの口が言ってやがる!!!!!」
『大丈夫です!! そこにいる
「テメェこのカス……!!!!」
「ハァッ!?!? なんで俺に飛び火したの!?!!?!?!??? 意味不明過ぎない!? 横暴すぎじゃなぁあーいッ?!?!?!???
だいたいさっきから見てれば誰の許可得てAちゃんの手に触って、
ア゛ア゛アァーーーーーーーーッ!!!!!(高音)」
『っ、』
「………」
一時休戦。
善逸くんが叫んで、私と獪岳さんは同時に手を離した。
何故って? 耳を押さえるためだ。
『…………』
「…………」
『……獪岳さん。彼、知り合いなんですか…?』
「…同門だ。不本意ながらな」
『なるほど……。私は同期です』
善逸くんから距離をとり、痺れる鼓膜を気にしながら話す。
同門、ということは我らが桑島師範の元で修行していたのか。…なるほど通りで。
走り方も似てるし、何より強いのにも納得がいく。
「オイぃぃい゛ッ!! 何俺をハブいて仲良さげに話してんだ!!」
『…お疲れのところ、引き留めてすみません。また会いましょうね!』
「はぁ……」
訳のわからない一体感が生まれた。
善逸くんが今のを狙ってやったんだとしたら相当な策士だなあ、なんて。
「…Aちゃ、ん…え……また会おうって何ィいい!?!!!?!!?
駄目駄目駄目!!!!!!! 絶ぇっ対駄目ぇええ!!! こいつクズなの!!!!!!!!!! とんでもないクズだから!!!
絶対絶対絶ッ対やめた方が、
イ゛ッテェッッッ!!!!!!!!!!!!」
ゴッッッ、
「……おい、二度とこのカスに余計なこと言うな。俺は帰る」
『は、はぁい…お疲れ様で〜す………』
い、痛そぉ〜……。
裏拳を頭に思い切り喰らって撃沈している善逸くんを横目に、
私は獪岳さんを見送った。
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作者名:朝餉。 | 作成日時:2021年8月14日 17時