faint light (ページ6)

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KodamaTomohiro ページ6

彼は優しい人だ。それこそ見ているこっちが心配になってしまうほどに。
その優しさに甘えているだけではだめだ、とも思う。
果たして私は彼からの愛情になにかを返せているのだろうか。
私は自分が不器用な人間であることを言い訳にして、大事なことから逃げ続けているだけなのではないか。こんな自分が彼のそばに居続けてよいのだろうか。
そんなことをぐるぐると考え続けていたせいで、彼の帰宅にも一切気づくことができなかった。

「ただいま」
『うわっ！』
「そんな驚く？なんかごめん」
『いや、私が考え事してたせいだから全然いいんだけど...』
「どうしたの？何かあった？」
『ううん、なんでも！』

彼に余計な心配をかけてはいけない。少しは自立しないとだめなのだ。
彼も帰ってきたことだし夕飯の支度でもしようかと台所へと向かおうとした私の腕を掴んで引き留めてた彼はいつになく真剣な表情をしていた。

「俺には、相談できないことなの？」
『え？』
「俺には話せないようなことで悩んでるの？」
『別にやましいことではないけど...』
「けど？」
『ちょっと言いづらい、かな』
「それは俺に遠慮してるの？それとも自分が嫌なの？」
『うーん、どちらかというと前者だと思う』
「じゃあ話してよ。俺、嫌い以外だったら何言われても平気だから」

話さない限り逃がさないぞ、というようにしっかりと腕をつかまれてしまったために仕方なく彼に全てを話すことにした。

『私、智洋みたいに好きとか言葉にして伝えることとかできないし。素直になれなくてひどいこと言っちゃってもいつも怒らずに受け止めてくれる智洋の優しさに甘えすぎてるな、とか思ってるうちにこのまま私一緒にいたら迷惑かなって。そばにいる権利なんてないかなとか考えちゃって...でももっと私、頑張るから...見捨てないで...』

耐えきれずに泣き出してしまった私をおろおろしながら抱きしめた智洋はとんとん、と背中を優しく叩いてくれる。

「俺はさ、見返りを求めてるわけじゃないんだよ。俺がしたいなって思ってることをやってるだけ。だからそんな思い込まなくていいんだよ」
『でもそれじゃ負担になっちゃう』
「ならないよ、俺はお前の笑顔が隣で見れたらそれでいいんだから」
『でも、私も何かしたい、智洋のために』
「うーんじゃあ約束してくれる？」
『うん？何を？』

智洋は身体を少し離すと肩に手をおいて私と目を合わせた。