NakanoNakaruthin ページ16
今日は入っていた仕事がバラシになって急にオフができてしまったので、彼女に会いに行こうと思う。だけどサプライズ訪問なんかしても会えるかどうかは正直微妙な賭けだ。
電話をかけてみるものの、3コール目で出ないので諦めて切る。出る気があるときはすぐに出るタイプの人だ。出ないときは出る気がないかスマホを見ていないかのどちらかだ。
「今日はどこ行ってるんだろうな...」
なんとなく今日は彼女の家から電車一本で行ける海に行ってみた。すると、青いワンピースを着た彼女が海風にスカートをはためかせながらそこにいた。
『あれ?悠だ〜、どうしてここがわかったの〜?』
「今日は天気もいいですし割と暖かいじゃないですか。それにこの前海の色のワンピース買ったって話を聞いたので、今日は海かな、と思って」
『なるほど〜もうすっかりあたし通だね」
よしよし、と頭を撫でてくる彼女に少し気恥ずかしいけれどもされるがままになる。
犬かはたまた子供のように扱われているにも関わらず心地よく感じてしまうのは、きっと相手が彼女だからだろう。
「今日もスマホを持たずに出かけてきたんですか」
『うん。あ、もしかして電話くれたの?』
「はい、突然のオフだったんで。急に押しかけたら迷惑かなとも」
『ふふ、折角のお休みならゆっくりすればいいのに〜。そんなにあたしのこと好きなんだ?』
「そうですよ」
僕の返答が予想外だったのか、大きな目をさらに大きくさせてこちらを見つめた彼女の反応が面白くてつい吹き出してしまった。
「そんなに意外でした?」
『そうだね〜。悠が素直だと珍しいね、明日は雨かなぁ』
そろそろ洗濯物が溜まってきたから困っちゃうなぁと失礼なことを言いながら波打ち際ではしゃぐ彼女は海から陽の光の反射を受けてまるで宝石のように煌めいて見えた。
その姿があまりに眩しくて、見つめているだけで胸が苦しくなってしまうほどだった。
『わっ』
「危ない!」
転びかけた彼女をすんでのところで抱きとめると、血の流れた人間特有の温かさを感じて安心する。
「気をつけてくださいよ...無事でよかったですけど」
『ふふ、ありがと』
「反省してないですよね?」
『だって悠が助けてくれるって信じてるもん』
「あなたが僕のそばから離れないでくれたらちゃんと守れるんですけどね」
『ごめんね〜』
「まあ、自由なところがあなたの魅力でもあるんですけどね」
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作者名:苺砂糖 | 作成日時:2024年2月10日 22時