選択肢なんて、いくらでも。【ナカノヒトゲノム】part2

▽94.発案！改造計画 ページ49

ラウンジ内にどことなく流れる穏やかな空気。

……こんな感覚いつぶりだろうか。きちんとした居場所のようなこの場所は、あったかい。


「女の子らしいってのも悪くない、って思えたかい？」

「……はい。私のこれなんかに時間裂いてくれて、申し訳ないですけど、嬉しいです」

「あのなァ、Aちゃん」


低い声。
パンッ、と軽い衝撃が両頬に走った直後顔が持ち上げられた。



「え……」


戸惑う暇もなく視界にはいつになく真面目な顔をしたカイさんが映る。


「いっつもお前さんは謝りが先だ。すみませんありがとうございます、ばっか聞いてんでぇ。腰が低いのか自信がねェのか知らねェけどよ」

「……あ、の……」

「俺らは謝りを聞きてェわけじゃねェ。率直に『ありがとう』、ただその言葉が欲しいんでェ」


どうすればいいのか、なんて言えばいいのか。怒ってるのかもしれない。
それに重なる皆のそれぞれの視線。色々なものが混乱を引き起こす。


「……今の気持ちをそのまま言ってみな」

「え、えっ？と、にかくすみませ……」

「馬鹿。違ェ。さっき言った言葉を表すだけだろ」


さっきの言葉……私が今思ってる感情だ。「嬉しい」。つまりは……。

なるほど。わかったよ。



「ありがとう」

「……そぉ。思ったことまんま出せばいいんでェ」


なぜか目を見開いた後、ぽんぽんと頭を叩くとそう言ってへらりと微笑んだ。

茶化しか励ましかさっきとうって変わって騒がしい皆。


ほんと、やられっぱなしだよ。カイさんにも皆にも。

本当に嬉しい。だからなんて言ったらいいのか迷うんだよ。
でもたった一言でいいんだ。



「……ありがとうございます」







自然と笑顔が溢れた。

これだけは何があっても無くさないようにしないとな。

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