選択肢なんて、いくらでも。【ナカノヒトゲノム】part2

▽93.発案！改造計画 ページ48

「はい。これで全員の役割説明は終わり。さ、Aちゃん早速着けてみてくれるかしら」


自分の体の動きが一瞬ガチンと固まったのがわかる。

でた。でました。例の似合わなかったら地獄と化すやつ。
今のこの一致団結のいい雰囲気を壊したらもうそれはやばいんですよ。それならまだ雷さんの窓に野球ボール投げ込んだほうがマシ。


「…………」

「Aさん？どうかしましたか……？」

「ヒミコちゃん、私はどうすればいいんでしょう……」

「えっと……？」

「……A」

「……はい」

「あと五秒以内に着けないとボクとカイさんで強制で着けさせるぜ」

「全力で挑ませていただきます」


年長者でしかも色々難アリの二人にやられるのは何より避けたい。テスト中お腹が鳴るより避けたい。

止むをえずヘアバンドを装着するべく腕を上げる。

私の緊張を悟ったのか皆不自然にそっぽ向くと「今日いい天気ですね〜」「雨降ってるけどいい天気ね」「今何時でぇ？」「十六時だ。そろそろ昼飯だな」とおかしな会話をし始めた。

本当にありがとう。その気遣いが刺さるんだ。



「……つけました」


来る反応を想像して視線が明後日の方向に向かう。
これは思った以上に気まずい。

バクバクと加速する心臓。静まり返るこの空間が辛い。



「に……似合ってるにゃ〜っ!!」

「おぶふっ急に抱きつき、おああぁ」

「似合ってますAさん……！」

「Aちゃんに合うようにきちんと考えたんだもの。似合ってて当然よ」


ああ、女性陣の優しさが染みる。さすが同性。


「……うさ耳、可愛い」

「似合ってるんだが……その、女性感が増したな」

「大丈夫ですよすぐに慣れます。ワインレッドもワンポイントマークもいい味出してて素敵です！」

「あ、ありがとうございます」

「……つーかテメーはなんでそんな気まずそうなんだよ」

「いや、まぁ……ははは」


安心感なのか嬉しさなのか肩の力が抜ける。

良かった。本当に良かった。

すると口を覆い肩を小刻みに震わせていたカイさんはにこりと笑うとこっちを見た。


「大層似合ってっからそんな構えなくてもよかったのに。まァAちゃんらしいと言えばAちゃんらしいがな」

「……ありがとうって言っていいのかわからない」

「でもA。照れ要素がなかったのが残念だよ。目を逸らすなら赤面は必須だぜ？」

「知りませんよもう嫌この年長組」


良かったけど助けて。この後多分これにナイフ入れなきゃいけないやつだ大丈夫かな。

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