▽80.鬼退治 ページ35
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「カイさーん!!」
「お、Aちゃんやっとかい。もうすぐ待ち合わせ場所着くとこだぜ」
へらりと笑って先を指さすカイさん。
まったくもってこれ以上ないくらいいつも通りだ。
「何か見つかったかい?」
「いえ全然。あんな和風な部屋新鮮だったんでちょっと見たかっただけなんですけどなんもなかったです」
「だろうねェ」
「地下牢の鍵とかあったらよかったんですけど」
「ジジィの部屋とはいえさすがにねェだろ」
……まあ確かにそれはある。
するといつの間にか待ち合わせ場所が見えていて、そこにはうつむいた忍霧さんが立っていた。
「忍霧さーん……!」
「おう、どうだった?」
私達が声をかけるとビクッと肩を震わし、ゆっくりと顔を上げる。
こっちを見る紫の目が怯えたように揺れた生気がなくなった表情。
様子がおかしい。何かあったのか。
「……妹が……ここに、妹がいた」
自分の息がつまったのがわかる。……ここに?
「これ……」
「……ブレスレット……?」
「妹のだ。妹の名前が……」
「……確かかい?」
「わからない。でも名前が、名前が……もしかしたらサクラもここに……地下牢に……」
ダメだ。完全に平常心を失ってる。今の忍霧さんにはどういう言葉をかければ一番いいんだろう。
「……落ち着きな。それどこにあった?」
「キジの塔の……廊下の隅に落ちていた」
「……入出は?もう三十分過ぎてるぜ」
言葉が入っていないのか無反応の忍霧さん。
「忍霧!」
「あ……え……?」
「お前さんとりあえず頭冷やしな。ちょっくら見てくらァ」
ここに来るための理由となった妹さんの手がかりが突然見つかり、更にもしかすると地下牢にいたかもしれない。
無理もない。今の忍霧さんは頭がいっぱいいっぱいだろう。
こんな状態の人をほっておくわけにはいない。というのも立派な考えだけど。
「私も行きます」
「……おう」
こんな状態だからこそ、他人と話すと余計に思考が荒れるというのも一つの考えだ。
答えがわからないからただ堂々巡りになるだけ。
今は一人で落ち着いたほうがいい。
それにアカツキ君も心配だ。
忍霧さんに会釈すると、少し先を行くカイさんを追いかけた。
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水野ひのは(プロフ) - 鬼ヶ崎カイコクさん» ふぁえ…!?カイさん!?まさかの次元を越えて遥々ありがとうございます。ご本人登場に驚きで目をかっぴらいたと共に笑っちゃいました。嬉しそうなの可愛いです…。いい刺激を頂いて力みます!長旅お疲れ様でした…。 (2019年8月25日 14時) (レス) id: 8eec0cab53 (このIDを非表示/違反報告)
鬼ヶ崎カイコク - 俺かっこよすぎじゃねぇか?(嬉しそう) (2019年8月25日 14時) (レス) id: 567b9ad697 (このIDを非表示/違反報告)
水野ひのは(プロフ) - 通行人Mさん» 毎度お早い拝読ありがとうございます。わわ…今度は一息ついて頂けるようこちらも息をおきます。そう言って頂けると私も夢主ちゃんも大歓喜です…!皆ワチャワチャラウンジ大惨事の会でした。ありがとうございます! (2019年8月25日 9時) (レス) id: 8eec0cab53 (このIDを非表示/違反報告)
通行人M - 更新ありがとうございます!!!鬼退治編も終わり、一息つこうかと思ったところで、ヘアバンド改造。いやぁ、いい物見させて頂きました…。そして心の準備が出来てないうちに作世ちゃんの絵で見事、惚れました…。可愛いがすぎる。皆がワチャワチャしてて面白かったです! (2019年8月25日 9時) (レス) id: b074e68c40 (このIDを非表示/違反報告)
水野ひのは(プロフ) - 通行人Mさん» お陰様でいよいよです…。ほとんど成り行きですが共に行動が多いですね忍霧夢主、鬼ヶ崎ストッパー、和ませ役(爆)ですね。いつも誠にありがとうございます!労って頂けて癒しです…頑張ります! (2019年8月23日 12時) (レス) id: 8eec0cab53 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:水野ひのは | 作成日時:2019年7月27日 18時