降伏 ページ28
その時、目の前にひどく息を切らしたドイツ兵が走ってきた。
「なんだ」ドイツが撃鉄に指をかけながら彼に尋ねると、伝令兵であろう彼はこう告げた。
「申し上げます！我が軍の将軍が降伏いたしました！他の兵も、武装解除を行いレジスタンスに降れ、とのことであります！」
ドイツはよっぽど動揺したんでしょうね、私と拳銃を落として、ただ静かに…「何故だ」と問うていた。
「それが…」伝令兵は言い淀んだが、意を決して告げた。「そ、総統閣下から三度に渡り、『パリは燃えているか？』との電報が入ったそうで…。それで、この美しい街を燃やすわけにはいかない、とのことです」
ふと見上げると、彼は震えて居た。そして生き残った数人の将兵と私たちが見守る中、はらはらと涙を零し始めた。
「っ、何故だ閣下…。俺が…国民があんなに苦しんだのは、この国のせいではないか！それなのに何故…！」
ああ、なんだか聞いた話だわ。短い間だったけど、私がサーカスにいる時に座長が話してくれたの。
この前にもヨーロッパ中を巻き込む大きな戦争があったらしいけど、ドイツは負けてその全責任を取らされた。具体的には、多額の賠償金と占領して居た私の故郷をフランス、つまりお兄さんに返すこと。それだけならよくあることなんですけど、主にお兄さんの大統領があまりにも法外な賠償金を吹っかけたせいで、ドイツの人たちはパンさえまともに買えなくなっちゃった、って…。
だから、あの総統が出てきてドイツをあそこまで立て直して、彼はおかしくなるほど総統に魅了されちゃったのよ。こうやってみれば、無理のない話ではあるわね。
でもだからってハンナを…ユダヤ人たちを連れ去ったのは納得いかないわ。
「ドイツ…」いつの間にか目を覚ましたのか、お兄さんはドイツに優しく語りかけた。「ただの腹いせだったのが、ここまでお前に負担をかけちゃってたとはね…。本当にごめんね？だから…」
「ええい黙れ！」空気を切り裂くような大声で、ドイツは悲痛に声をあげた。「一度は苦しめられた恨みだ。せめて貴様だけは殺して、その証を閣下に献上する！」
そういうと、彼は拳銃をサーベルに持ち替えお兄さんに向かっていった。
さっきはヘマしちゃったけど、もうあんなことにはならないわ、私はお兄さんの目の前に立ちふさがった。
「お兄さんを倒したいのであれば、まずは私からにしてちょうだい。『大ドイツ帝国様』」
続く
お気に入り登録で更新チェックしよう!
最終更新日から一ヶ月以上経過しています
作品の状態報告にご協力下さい
更新停止している| 完結している
←軍人の正体は
ラッキーカラー
あずきいろ
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 17人がお気に入り
お気に入り作者に追加
「ヘタリア」関連の作品
この作品を含むプレイリスト ( リスト作成 )
この作品を含むプレイリスト 
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
CP雑食北伊、独、加、普領= - 面白いぞ。更新、応援からな(ﾆｺｯ (2014年10月6日 17時) (
レス) id: 181ed7202d (このIDを非表示/違反報告)
清 - めっちゃ面白いですぅぅぅ！更新頑張って下さい！応援してます！(//∀//) (2014年2月27日 1時) (携帯から) (レス) id: 8fa14e1e64 (このIDを非表示/違反報告)
シフォ - 面白かったです。 頑張って下さい！！ (2014年2月2日 23時) (レス) id: 293affecc0 (このIDを非表示/違反報告)
リーザ(プロフ) - natuten777さん» ありがとうございます！更新滞りがちですが、頑張ります！ (2013年11月30日 23時) (レス) id: 361ef2924c (このIDを非表示/違反報告)
natuten777(プロフ) - いい話ですよぉぉ！！(´；ω；`)、感動させて頂きました！(≧∀≦) (2013年11月20日 22時) (レス) id: ebd4eed5ea (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：リーザ | 作者ホームページ：http://uranai.LISA03
作成日時：2013年10月14日 11時
