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窓から差し込む朝日が眩しくて目を細める。
あの後私はベッドに戻り、朝を迎えた。周囲の子の声に起こされた。先に起きた子に起こされた別の子が文句を言うのが聞こえたのだ。
ベッドを降りて廊下を歩く。開かれた扉をくぐり抜け、食堂の机を見る。既に来た子が朝食を食べている。昨日の夜に見たあの本はなかった。流石に片付けられたのだろう。
職員の人にお盆に乗った朝食を貰う。茶色がかった拳大の硬いパンが一塊、薄い野菜のスープ、ぱさついた燻製のトラウトの切り身、ソーセージ。席に着いて、パンをちぎってスープに浸け、水分を含ませて口に含み、咀嚼する。美味しくはない。いかんせん味が薄いのだ。燻製を齧る。少し塩気が強いけれど、パンとスープと合わせるとなるとその塩気がちょうど良い。ソーセージは食感は良いけど、少し血腥くて匂いがきつい。
少し我慢して食べ終えて、お盆を職員の人に渡す。そのまま廊下に出て、歩く。
今日は何をしたら良いんだろう。私は考える。何をして時間を潰していたら良いんだろうか。
だって、退屈なのだ。この孤児院は確かに良いところだろう。こんな時世だから食糧だって足りなくてもおかしくないのに、孤児なんてたくさんいるのに、ちゃんと皆が飢えないだけの食糧を分け与えてくれるんだから。それに、孤児達は喧嘩をする事はあっても、誰かをいじめるような事もなかったし。
けれど私の心は満たされなかった。母の面影が私の目の裏をちらついていたから。私は母とのあの暮らしが忘れられなかった。暮らしが失われた事を嘆いているわけじゃない。悲しいという気持ちが湧き出す事すらなかった。だって、そもそも失った事を受け入れる事ができなかったのだから。
「……!」
……何だろう。声がする。孤児達の声じゃない、大人の声だ。孤児の誰かが職員の人に怒られているのだろうか。声は……廊下の奥の物陰から聞こえる。私は少し気になって、足を運んだ。
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