泡沫の友人 ページ9
.
「おはよう、今日もかわいいわね」
うさぎのようななにかに触れそっと撫でれば、その子は目を瞑ってそれを受け入れる。
最後に飴を渡せば、うきうきとした足取りでどこかへと行ってしまった。
私は所謂人ならざるもの、幽霊といった類のものが昔から見える。それを自覚したのは幼少の頃からで、それらに抵抗はない。
今みたいに簡単に触れてしまうし、他人から見た私は心底不思議、または気持ち悪いのだろう。
けれど別に気にしてなんかいない。他人になんて興味ない。私は私であり、幽霊は嫌いじゃないから。
「…あら、またうさぎさん。なにを持っているの?」
旧校舎の階段の手すりに座っていたうさぎさんは、誰かの私物であろうノートや教科書を持っていた。
私が届けてもいいのだが、私を知っている人だったら不審がるかもしれない。ただでさえ良い印象ではないのだから。
仕方ない、校舎まで持っていけば誰かしらがとどけるだろう__そう思って飴とノート類の物物交換をしようとすれば、あー!と声が響く。
なにかと思ってそちらを見れば、小さな男の子で。ぐりっとした瞳と昔の制服、学帽…あと、浮いてる。
なるほど、これは。
「飼い主?」
「違う!…って、俺のこと見えるの?
もっけも見えるからそうか」
「もっけ?…うさぎさんのこと?」
うさぎさんをぐりぐりと撫でればヤメロ、と。この子は受け入れてくれないうさぎさんなのね、なんて手を離す。
「あー、っと。そいつらが盗んだものを集めててさ。君が返してくれるって言うなら好都合っていうか、生きてるし」
「いえ、私は…私ではダメ。きっと持ち主が嫌がるわ。貴方がしてあげて?」
「? …わかった」
はい、とさっきのものを渡す。
よく見たら透けているらしい。まあどう考え込むも幽霊だろうとは思っていたけれど。
「あ、そうだ。名前は?」
くるりと振り返って、そう問われる。まあ教えない理由もないので、大人しく答えることにした。
「黒崎A」
「クロサキね。俺は…花子くんって呼んでもいいよ?」
「花子くん?」
トイレの花子さんみたい。
そう小さく呟けば、彼はニヤァっと笑って。
「本当にそうって言ったら、どうする?」
なんて。
…どうする、か。花子さんと伝えられたところで、特にリアクションはない。強いて言うなら幽霊より妖怪の類なんだな、と。それだけだ。
……それなら。
287人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「短編集」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
蓮 - まめさん» ありがとうございます。好きと言ってもらえて嬉しいです。ミッドナイトは実は私も気に入ってるので嬉しいです。笑 引き続きよろしくお願い致します。 (2020年2月12日 0時) (レス) id: 85c52fd00e (このIDを非表示/違反報告)
まめ(プロフ) - 初コメ失礼します! ほんとにこの作品すこです、、ミッドナイト・メランコリックがほんとにすここです!更新頑張って下さい! (2020年2月8日 21時) (レス) id: a5d55e68a9 (このIDを非表示/違反報告)
蓮 - みどりさん» 好きと言ってくださっただけでもとても嬉しいです。引き続きよろしくお願い致します。 (2020年1月30日 11時) (レス) id: 85c52fd00e (このIDを非表示/違反報告)
蓮 - すばるさん» 神秘的…初めて言われました。とても嬉しいです。引き続きよろしくお願い致します。 (2020年1月30日 11時) (レス) id: 85c52fd00e (このIDを非表示/違反報告)
みどり - やだ好き(´∀`*)ポッ←簡潔にまとめました( ー`дー´)キリッ(簡潔にまとめすぎた) (2020年1月29日 22時) (レス) id: ae6be26781 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:蓮 | 作成日時:2020年1月24日 19時