好きです、あまね先生 ページ5
．
理科も数学も、ハッキリ言って意味が分からない。数字の羅列、変な図形、公式、記号…将来役に立つかも分からないそれらを今必死に詰め込んだところで、後々必要になる出来事など思いつかないわけで。
とは言え学生の本分は勉強。まあこうやってぐちゃぐちゃ言ってもやらねばならないのだ。
…そもそも分からないところが分からない状態の私に不可能なのだけど。
うー、と唸っていれば影が差す。
｢本当に黒崎は文系だね｣
くすくす笑う声に釣られて上を向けば、そこには大好きな人。
白衣の似合う、理科担当の柚木先生だ。
補習という名目ではあるが夏休みに会えるのだから不幸中の幸いってやつ。
｢うー、あまねくん…｣
｢先生、な。…何処がわかんないの？｣
さっきよりも近くなった距離にドキドキしつつ、ここ、と指差す。
ここか、と柚木先生が納得して丁寧に教えてくれるが一向に理解できないし、そもそも頭に入ってこない。
なんでここがこうなるの、と不満をぶつけるように教科書を違う単元のページへと捲れば、柚木先生は困ったように笑う。
｢仕方ない、ちょっと休憩しようか。
…黒崎は星が好きなんだっけ？｣
頬杖をついて私を見る先生にキュンとくる。そういう何気ない仕草も絵になるから罪深い。…なんて、恋してるからこその特権なのかもしれないけれど。
でもこういう小さいことを覚えてくれていることが、幸せでたまらない。
｢そう！あ、そっか、先生天文部だよね｣
｢うん、近々天体観測する予定｣
｢え！そんなあ…行きたかったのに…高等部ずるい…｣
天体観測など夜に活動する場合は高等部しか許可されていないため、中等部である私はできない。
先生は項垂れる私に苦笑して、あと1年だから、なんて。その1年後に先生がいるかも分からないのに、呑気なことを。
｢先生はなんで先生になろうとしたの？｣
ふと、そんなことを聞いてみた。
なんとなく気になったって、そんな感じの理由。でも先生はそんな質問を気にすることなく考えて。
｢え、んー…｣
｢中学のとき好きだった教科は？｣
｢保健体育｣
平然と答える先生に、今度はこっちが苦笑する。1歩間違えたら先生が警察にお世話になりそうだが、そんなことを言える仲と思えば、まあ。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 288人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「短編集」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
蓮 - まめさん» ありがとうございます。好きと言ってもらえて嬉しいです。ミッドナイトは実は私も気に入ってるので嬉しいです。笑 引き続きよろしくお願い致します。 (2020年2月12日 0時) (
レス) id: 85c52fd00e (このIDを非表示/違反報告)
まめ(プロフ) - 初コメ失礼します！ ほんとにこの作品すこです、、ミッドナイト・メランコリックがほんとにすここです！更新頑張って下さい！ (2020年2月8日 21時) (レス) id: a5d55e68a9 (このIDを非表示/違反報告)
蓮 - みどりさん» 好きと言ってくださっただけでもとても嬉しいです。引き続きよろしくお願い致します。 (2020年1月30日 11時) (レス) id: 85c52fd00e (このIDを非表示/違反報告)
蓮 - すばるさん» 神秘的…初めて言われました。とても嬉しいです。引き続きよろしくお願い致します。 (2020年1月30日 11時) (レス) id: 85c52fd00e (このIDを非表示/違反報告)
みどり - やだ好き(´∀｀*)ﾎﾟｯ←簡潔にまとめました( ｰ`дｰ´)ｷﾘｯ(簡潔にまとめすぎた) (2020年1月29日 22時) (レス) id: ae6be26781 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：蓮 | 作成日時：2020年1月24日 19時
