追憶ノ参___一生を共に ページ4
【死ガ二人ヲ分カツマデ】
生活に慣れ始めてから、また数年。やっとかつての父と同じ、炎柱になった。そう、この日。彼女に想いを伝えようと思う。
確かに、一つ屋根の下で暮らす身。断られてしまえば、気まずくなるだろう。それを承知の上で、想いを告げようと決心した。
「A、久し振りだな」
『杏寿郎さん、お帰りなさい』
「兄上、お帰りなさい!!」
しばらく、鬼殺隊としての任務があり、帰ることができなかった。久し振り、に色々なことを籠めて告げる。
せーの、と千寿郎とAが顔を合わせて言う。一体、何が始まるのだろうか。戸惑いと期待の瞳で、二人を見つめた。
「『炎柱、昇進、おめでとうございます』」
千寿郎が笑顔で飛び付いてきた。後を追うように、彼女も間をあけて近寄ってくる。そんな二人を思わず、抱き締めた。
「よもやよもや……、まさか二人がこんなことをしてくれるなんてな!!俺は嬉しいぞ!!」
『やりましたね、千寿郎』
「はい!!喜んでもらえました!!」
うっすらと微笑みを浮かべるAに、なんかこうグッとくるものがあるが、そんなことを振り払い、彼女の手を握った。
白く細い、今にも折れてしまいそうな指に少し力を緩める。困惑するように眉を上げたAと、不思議そうな顔の千寿郎。
「実はな、Aに伝えたいことがあって、今日は戻ってきたのだ」
『伝えたい、こと……?』
瞳をぱちくりと瞬かせ、首を傾げる彼女。大きく頷き、懐から櫛を差し出した。櫛には求婚の意味がある。
「A、俺と共に一生を添い続けてはくれないだろうか!!」
彼女の瞳が丸くなった。驚いたのか、戸惑っているのか、嬉しんでいるのか、全く分からないが兎に角、言葉を続ける。
「君が鬼の在る世界で一度は失ってしまった幸せ。今度こそ俺が守り抜いて見せよう」
次第に彼女の頬が、桃色に染まっていく。陶器のように白い肌なので、顔色に出やすいのが彼女の弱点だ。
「俺はAに初恋を捧げる。この命、潰えるときまで。共に支え、寄り添おう」
Aの口角が、ゆっくりと上がっていく。そして象られた微笑み。それは、まるで大輪の花のように美しく咲き誇っていた。
『はい…』
それはもう。逃がさぬように力強く、それでいて彼女の細い体が折れないように優しく抱き締めた。
Aは驚いたのか、一度体を固まらせてから、ゆっくりと抱き締め返してくれた。千寿郎の歓喜の声。
祝言を挙げたのは、その年の冬だった。
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ユリ(プロフ) - 出来ればでいいんですが、後日談的なものがみたいです (2020年8月26日 18時) (レス) id: ba2a71100d (このIDを非表示/違反報告)
セニオリス - ユリさん» 最後まで読んで下さり、本当にありがとう御座いました。またこの作品に顔を出してもらえると嬉しいです。 (2020年4月7日 21時) (レス) id: 353512f049 (このIDを非表示/違反報告)
ユリ(プロフ) - 完結おめでとうございます。最後まで感動しっぱなしでした (2020年3月2日 11時) (レス) id: ba2a71100d (このIDを非表示/違反報告)
セニオリス - アリスさん» 毎度毎度、遅くて申し訳ないです!!最近、スランプ中でして……。どうにか必死に更新をしたいと思います……!! (2020年2月23日 10時) (レス) id: 9ec8afc8ac (このIDを非表示/違反報告)
アリス - 続きがものすごく気になってそわそわして寝られません。更新頑張ってください (2020年2月21日 22時) (レス) id: ba2a71100d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:セニオリス | 作成日時:2019年7月8日 14時