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伍ノ壱 揺られる汽車 ページ22

【鬼を連れた隊士一行】


「うまい!」



うつらうつらと眠りに落ちそうになる度に、杏寿郎の満足そうな声がする。向かいの席に座りながら、目を擦った。

「うまい!」



「あの人か、炎柱」



「うまい!」



「うん…」



「ただの食いしん坊じゃなくて?」



「うん…」



「うまい!」



こちらを伺うような声の方に、ゆっくりと顔を向ける。かすかに鬼のような気配を感じた。性格には一人の青年隊士の箱の中から。

この子が産屋敷の言っていた、鬼を連れた隊員だろうか。額に色濃く残る痣が印象的な素直そうな少年だ。

「あの……、すいません」



「うまい!」



「れ、煉獄さん」



「うまい!」



ちゃんと飲み込んでから、彼らの方を向いて言い直す彼。呆れ顔の二人をぼんやり見つめながら、汽車が揺れる振動に身を震わす。

まだ汽車は出発していないというのに、グワングワンと震動音を立てているように聞こえる。どうやら、寝惚けているらしい。

金髪の少年と目が合った。たちまち少年の顔が赤く染まる。熱でもあるのか、それにしても南蛮から来たわけでもないだろうに。

その奇抜な髪は何なのだろうか。完全に純日本人の顔をしている。気になりつつも、またうつらうつらと首を傾けた。

「あ、あの!!」



『……え?』



「おおお俺、我妻善逸と言います!!綺麗なご婦人のお名前は?」



『えっと』



「彼女は俺の妻だ、黄色い少年!」



「……え、奥さんを任務に?」



どもる私に、杏寿郎は自慢げに胸を張って告げた。立場は言っているのに聞かれたことに、答えられていないとは。

痣のある少年が驚いたように、口に手をやる。確かに、普通なら任務に隊員以外の人間が参加するのは危ないし、可笑しいだろう。

『煉獄Aと申します。任務に同行しているのは、産屋敷様の意思です』



「どうして、Aさんが任務に?」



「俺にも分からん!」



『……』



杏寿郎や千寿郎に産屋敷と話したことは言っていない。義父の方は屋敷にいたので、気配で分かっただろう。

ただAにとって、支える大義名分と任務に同行させる許可を取るために彼はわざわざ病に侵された体でいらした。

ぼんやりと窓の外を見つめた。

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ユリ(プロフ) - 出来ればでいいんですが、後日談的なものがみたいです (2020年8月26日 18時) (レス) id: ba2a71100d (このIDを非表示/違反報告)
セニオリス - ユリさん» 最後まで読んで下さり、本当にありがとう御座いました。またこの作品に顔を出してもらえると嬉しいです。 (2020年4月7日 21時) (レス) id: 353512f049 (このIDを非表示/違反報告)
ユリ(プロフ) - 完結おめでとうございます。最後まで感動しっぱなしでした (2020年3月2日 11時) (レス) id: ba2a71100d (このIDを非表示/違反報告)
セニオリス - アリスさん» 毎度毎度、遅くて申し訳ないです!!最近、スランプ中でして……。どうにか必死に更新をしたいと思います……!! (2020年2月23日 10時) (レス) id: 9ec8afc8ac (このIDを非表示/違反報告)
アリス - 続きがものすごく気になってそわそわして寝られません。更新頑張ってください (2020年2月21日 22時) (レス) id: ba2a71100d (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:セニオリス | 作成日時:2019年7月8日 14時

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