【煉獄杏寿郎】俺は君に初恋を捧げる

壱ノ参　家出 ページ7

【思い出して苦笑いを】


「煉獄、その話は置いといてだ。昨夜は何時もしないことをやったりしたか?」



「むう…?」



「些細なことでいいんです」



宇髄が急に真剣な顔になって聞いてきた。また、それにつられるように杏寿郎の眉が上がり、重苦しい雰囲気になる。



「帰宅する前に、夕食の買い出しに行っていたAを見つけて、共に帰ったな。鮭大根を作るらしく、魚屋に寄っていた」



「鮭大根…!!」



「うわぁ……」



鮭大根、と聞いた瞬間に冨岡がいつもは端正(だが宇髄曰く地味)な顔を、涎を垂らさんばかりに、ふにゃっと柔らかくする。

その表情を見た瞬間、思わず本音が洩れたのか、胡蝶が思いっきり顔を歪めて、本気で気持ち悪そうに呟く。



「重そうだったので、荷物を持ってやりながら一緒に家に帰ってから、“今日は俺が食事を用意する”と言って……」



「煉獄さんは料理もできるのね!!」



「いや、とても食べれるものではなかったな。Aと千寿郎は顔をひきつらせながら美味しい、と無理矢理食べてくれたが」



その言葉に一堂がしぃんと静まりかえる。確実に絶対に、そのことが原因に違いないだろう。それで愛想をつかすとは思えないが。

「それが原因ですね」



「でも、それだけで家を出るか?」



「女の考えることは分からないぞ、宇髄」



「とか言う、冨岡さんも素敵……!!」



「こんな地味な奴より、派手な俺様だろ」



「一夫多妻の方に言われたくない言葉、堂々の一位ですよね、それ」



「んだと、テメェ」



「大体、Aさんの写真見てたときもニヤニヤしていたでしょう」



「確かに綺麗な容姿だが、飾り気がねぇだろ。もう少し派手じゃねぇとこの天元様の嫁には、なれねぇぜ?」



「今の奥様たち以外は、もう貴方のことを好きになる方なんていらっしゃらないかと」



「だ、大丈夫よ!!宇髄さんだから、すぐに恋人ぐらいつくれるわ!!」



「そういう甘露寺はどうなんだ」



「そりゃ、私だけを愛してくれる殿方に嫁ぎたいわよ?そーいう、冨岡さんも、自分だけを愛してくれる人と結ばれたいでしょ?」



「結局のとこ甘露寺も実質はそっち側じゃねぇか!!」



「これではっきりしましたね。今の時代に妻三人とか、彼女たちじゃなきゃ殺されてましたよ」



「俺の味方いねぇんだけど、煉獄!!」



そこで、原点の話を思い出し全員黙った。

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