拾壱ノ弐 相対する想い ページ43
【海の上の町の中の】
Aが思うに。煉獄杏寿郎という人物は、とても人当たりが良く、親しみを感じられる人間だ。彼は人としてかなり模範的だろう。
優しいし、当たり前のように親身になって話を聞いてくれる。その豪快さと云うか、無邪気さがキズとなることは多々あるのだが。
だからこそ。自分にこうして構うことが理解出来ていない。何て考えながら、目の前で一緒に昼食を取っている杏寿郎を一別した。
『……あの』
「む、どうした?A!!」
話し掛ける度に嬉しそうに頬を緩めて。確かめるように名前を呼ぶ。逸れもまた謎だ。何が面白くて自分なんかに構っているのだ。
『どうして私と昼食を食べているんですか』
「どうして、と云われてもなぁ。君が好きだから一緒に食べているだけだが」
『はぁ……』
返す言葉も見当たらず、Aは溜め息のようなか細い声で頷く。自分の何処が良いのだか。何度目か分からない問いが頭をよぎる。
秀でたところもないだろう。容姿だって普通だし、裁縫も料理も洗濯も。それなりに出来るだけである。全てにおいて普通だろう。
「いや、そんなことはない」
『……え?』
「Aは美しい容姿をしているし、料理だってうまいだろう。それに、昔は破れた羽織の裾を縫ってくれた」
『えと、』
「まぁ、覚えていないのも無理はない」
嗚呼、やめて。そんな悲しそうに笑わないで。言葉は喉に引っ掛かって出てきてはくれない。何も云えずに空気が吐息だけを伝えた。
知らない自分の行動。それら全てに何故か、思い出があるのはどうしてだろう。確かに彼の羽織の裾を縫った。料理も毎日作った。
任務で帰りの遅い杏寿郎を、毎日あの屋敷で待っていた。記憶も消えてしまったが。それは確かに。彼の側に居たという証。
「泣かないでくれ」
『ぁ……』
「君に泣かれるのは辛い」
『でも、だって』
「無理に思い出さなくて良いんだ。二人で欠けてしまった思い出を埋めていこう」
『_____杏寿郎さん』
「A、俺は君のことを_____」
そう囁いてくれたのは。何時のことだったか。思い出せることはない。ただ、確かにそこにあったのだと。それだけが心に染みた。
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ユリ(プロフ) - 出来ればでいいんですが、後日談的なものがみたいです (2020年8月26日 18時) (レス) id: ba2a71100d (このIDを非表示/違反報告)
セニオリス - ユリさん» 最後まで読んで下さり、本当にありがとう御座いました。またこの作品に顔を出してもらえると嬉しいです。 (2020年4月7日 21時) (レス) id: 353512f049 (このIDを非表示/違反報告)
ユリ(プロフ) - 完結おめでとうございます。最後まで感動しっぱなしでした (2020年3月2日 11時) (レス) id: ba2a71100d (このIDを非表示/違反報告)
セニオリス - アリスさん» 毎度毎度、遅くて申し訳ないです!!最近、スランプ中でして……。どうにか必死に更新をしたいと思います……!! (2020年2月23日 10時) (レス) id: 9ec8afc8ac (このIDを非表示/違反報告)
アリス - 続きがものすごく気になってそわそわして寝られません。更新頑張ってください (2020年2月21日 22時) (レス) id: ba2a71100d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:セニオリス | 作成日時:2019年7月8日 14時