花憑きよ、舞え【鬼滅の刃】

15: 勝手な ページ17

槙寿郎「…やはり俺は行かん」

先ほどからムスッとした表情を崩さない彼は、より深い皺を眉間に刻ませた

A「槙寿郎さま、ですが、ご子息がお怪我をなされたと、」

槙寿郎「俺には関係ない話だ」

鱗滝「…」

A「関係ないと…？それは何故、」

戸惑う少女に構わず、槙寿郎は踵を返した

それを隠の者は慌てたように引き止めた

隠「煉獄さま困ります。育手として、貴方様から先にA様を指導せよとのお館様からのお達しがあるのです。ですので、面会の後にAさまを煉獄家へとお連れして貰わねばなりません」

槙寿郎「…では、其奴を連れて帰るという任は杏寿郎に渡すがよい」

そう言葉を吐き捨てた槙寿郎は次に、困ったまま眉を垂れるAを冷めたような眼差しで見下ろした

A「お前を見るのはお館様からの願い故にだ。俺の意ではない。だから、期待はするな。俺はお前に何も教える気はない」

キツい眼差しとキツい口調で、彼は脅すようにその言葉をAへ残し去っていった

A「槙寿郎さまは…」

そこまで小さく言葉を零した少女は、何か思って口を噤み、取り残された事に軽く溜息を吐いた

そして、同じく困ったように頭を抱える隠の男に穏やかに笑う

隠「あぁ、何て勝手な…！困った、あぁ…」

A「こればかりは仕様がありません。隠のお方、先ずは蝶屋敷へと向かいましょう」

隠「ですが、Aさま！」

A「構いません。槙寿郎さまは師となるお方です。その下につく私が口を出すわけにはいきますまいに」

我が里の者達との面会後はご子息の杏寿郎さまにお会いして、私から事情を伝えます

ですから、この件を貴方様が気負わなくとも良いのです

隠「ですが、それでは面目が…それに煉獄さんも任務がありますので、帰路に着くまで待って頂く必要が…」

A「お気になさらないで下さいませ。ふふ、実は私、鱗滝様の弟子の方にもお会いしたく思っていたのです。待っている間、少しでもお話ししとうございます」

隠「…鱗滝様はそれでも宜しいので？」

鱗滝「儂は構わんぞ。元より、弟子の顔を見たかったのでな。それに儂からもAを紹介せねばと考えていた所だ。それには今日が都合が良い」

なに、Aはあの雪の妹だ。義勇も錆兎も喜ぶだろう

鱗滝はそう言って静かに頷いた

隠「…恩にきます。では、案内を続けさせて頂きます。後5分程で着く予定ですので」

A「えぇ、お願い致します」

一同は再び蝶屋敷へと足を進めた

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