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私はペット。2 ページ10

朝は早い。
何をしろとも言われずに生きるには広すぎるこの地。だから私は、自分から進んで仕事を貰ったのだ。
翠の彼は、空っぽだった私を見かねて、頭を悩ませた。
『本来ならば、この地を探索するなど、許せるものではないが…。そうだな。1人で抜け出した時も無事であったように、君には神の加護がついているようだし。』
そう言う彼は、なんだか、娘を初めて外に出す父親のようで、少しだけ懐かしく見えた。

こうして許された仕事は、生物の世話係。といっても、幻獣に関わってはいけないという縛り付きだった。小さな精霊は問題ないが、大型のものはどうも危険、らしい。

彼は、基本的には私を大切に扱う。
私が幻獣に襲われた時、突風と共に現れ、小さな呪文で私を救った。体が大きいので、周りの木々を数本倒して傷がついた彼は、驚くほど赤い血を流しながら、私を見つめ、治癒の呪文を唱えた。その後自分の傷を治し、少し考えてからもう一つ呪文を唱えた。
『君が、これ以上傷つかないように。君に危険が迫れば、すぐに見つけられるように。』
なんだかわからなかった。でも、すごく暖かい響きだった。

私は洞穴に隠したバスケットを持ち出し、手際よく木の実を摘み、少しづつ歩き出した。目指すのは小さな祠。小さな生物の集会所だ。


祠に着くと、既に私を待つものがいる。
遅いよ。と言わんばかりに鹿は頭を上下させ、うさぎは耳をピクピクと動かす。リスの子は私の肩にはい登り、バスケットを熱心に見つめる。
いいよ。そう言い、祠の側にバスケットを置くと、小さな者達は一斉に集まって木の実をつまむ。
よく見ると、みんな傷を負っている。
それに気づいたのは何日前か、何年前か。生き物との触れ合いという、数少ない娯楽の中、私はある囁きを聞く。

〈おいでおいで、こっちへおいで。楽しい楽しい宴だよ〉

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設定タグ:短編集 , リメル , 夢小説   
作品ジャンル:恋愛, オリジナル作品
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作者名:リメル | 作成日時:2017年11月3日 21時

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