夜の真実 ページ5
月が、綺麗ですね。
昔から密かに語り継がれている、暗号。
最早、一般常識と言っていいほどに普及しているのに、私の頭からはすっかり抜け落ちていたみたいで。
修学旅行の夜、私にそう告げた彼は、月明かりに照らされた頬を薄紅に染めていた。
A「そうね。こんな夜は、静かな海辺ではしゃいでみたくなる。」
私がそう言うと、彼は再び挑戦をしてくれて、
彼「す、好きです。Aさん、僕の彼女になってくれませんか…?」
彼が私の、初めての恋人。
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A「う〜ん、気持ちいい快晴だ。」
彼「そうだね。絶好の、お出かけ日和。」
ぐ〜っと、大きく背伸びをしたら、眩しい太陽が目に入る。
今日は、彼と私の初デート。
正直に言うと、私は彼のことを異性として意識した訳では無い。ただ、こんな私を好いてくれる人物を大切にしたい。もっと深く知りたい、と感じた。それだけだった。
未熟な私には、まだ恋などこれっぽっちも理解出来ていなくて、いろんなことにおいて、彼に任せっきりだった。今日のプランもそう、その一つ。
彼「どう?久々の遊園地でしょ。僕、Aさんと遊園地に行くの、夢だったんだ。」
A「夢?そ、そっか。こんなことで喜んでくれるなら、私も嬉しいよ。」
本当に、私、愛されてるんだ…。
お互いに、実感の湧かないまま、時はすぎてゆく。
キャラクターショーを見たり、観覧車に乗ったり、美味しいもの巡りしたり。
どれも彼氏と一緒。それが新鮮で。私には一生無縁の出来事と思っていたから、心から楽しかった。
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彼「ねえ、あそこ入ろうよ。」
お昼を食べおえて一息ついた時、彼が指さした場所には、
A「ええっ、お化け屋敷……?」
彼「そう。苦手?」
A「苦手も苦手、大の苦手ですっ!!無理無理、入れないっっ…(。>ㅿ<。)💦」
必死に首をふる私の頭を両手で抑えて、彼は私を見つめる…
にやけてる、絶対楽しんでるな、こやつ。
私を見つめるその目は優しく、しかし無邪気にも輝いていた。
…なんだろう、胸が、トクン、と音を立てる。
思わず、小さく鳴る心臓に手を置いた。
心地よくて、暖かな何か。
数秒の沈黙の後、彼は私の手を引いて歩き出す。どうやら私に拒否権はないようだ。無念。
それにしても、あの小さな音は、。
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作者名:リメル | 作成日時:2017年11月3日 21時